読書記録

『財布は踊る』原田ひ香

No.1809 2023年10月13日読了 母子家庭で育った葉月みづほは、お金に恵まれていなかったことから、高校時代に流行った長財布を手にすることが無かった。結婚して夫と子どもの3人家族であるが、今は夫の稼ぎだけで暮らしているので、生活はギリギリというところだろうか。みづほはそれでも節約をして、買いたいものも我慢してハワイ旅行に行けるだけの貯金をする。そして念願かなってハワイ旅行に出掛け、憧れのルイ・ヴィトンの財布を手に入れた。その大切な財布は、残念ながら長くみづほの側に置いておけなかった。 物語はこういうところから始まり、いろいろな人とお金の物語が展開して行く。ネタバレになるので、詳細は書か[…]
麦二郎
6ヶ月前

『クロコダイル・ティアーズ』雫井脩介

No.1799 2023年8月30日読了 クロコダイルティアーズとは、嘘泣きのこと。このタイトルが秀逸なのは、ラストになってわかった気がした。 夫を元彼に殺された妻が主人公かなと思ったら、物語が綴られている視点からすると、息子を嫁の元彼に殺された母親が主人公なんだろう。人は疑いの目で物事を見始めると、全てが疑わしく見えてしまうものかも知れない。 『火の粉』という著者の作品に似ていると思いながら読み進めた。図書館本なので、できたら今日読み終えて、明後日にも返却しに行かなくちゃと思って、毎日100ページ強読む計画を立て、順調に計画通り読むことができた。計画通り読み終えることができたのは、面白くてペ[…]
麦二郎
8ヶ月前

『ラジオ・ガガガ』原田ひ香

No.1797 2023年8月13日読了 『ラジオ・ガガガ』というタイトルは、素晴らしいと思う。まさにラジオはガガガっていうイメージがするからだ。僕がラジオを聴いていたのは、高校生くらいの頃だったろうか。もちろん、オールナイトニッポンという番組も聴いたことはあるが、それほど熱心なファンではなかった。 僕が一時期のめり込んでいたのは、海外の短波放送を聴くという趣味だった。雑音がひどい中、ダイヤルを回して音がするところで耳を澄ます。どこの国の放送かを確認して、視聴したことを郵送で報告する。BCL(Broadcasting Listener)ブームは、1970年代だったみたいで、僕も海外の放送局から[…]
麦二郎
8ヶ月前

『「すぐやる」よりはかどる!仕事を「短くやる」習慣』山本大平

No.1796 2023年8月11日読了 仕事を短時間で済ませたい、そんな願望がいつもあって、こういう本を見ると読みたくなります。仕事を短時間で済ませられる効率的なやり方が書かれている本、というイメージだったのですが、読んでみると若干期待値からは外れていた気がします。仕事を効率的にやるノウハウではなく、仕事に時間をかけないためのノウハウの方が多かった気がします。 42項目のコツが書かれている本なのですが、いくつか実践しようと思うことがありました。最もこれがと思ったことは、「1分で説明できる資料を作る」ことです。何の話、依頼内容、結論、論拠、補足という5項目で資料を作るということだったのですが、[…]
麦二郎
8ヶ月前

『刑事何森 逃走の行先』丸山正樹

No.1795 2023年8月8日読了 『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』のスピンオフ、刑事何森シリーズの第2弾と言うことだった。この本を先に買って、第2弾ということを知り、第1弾の『刑事何森 孤高の相貌』を図書館で借りて来て読んだのは、先月の下旬のことだった。 そしていよいよ第2弾のこの本を読了した。第1弾と同じで、3つの短編で構成されていて、「逃女」と「永遠」、「小火」の3編で構成される。 「逃女」(とうじょ)は、とある食品包装会社で起こった傷害事件が物語の発端となる。傷害事件を起こして逃亡したのはベトナム人技能実習生で、その行方を追いかける何森と荒井みゆきが行きつくのは、行き場を失った[…]
麦二郎
8ヶ月前

『夜明けのすべて』瀬尾まいこ

No.1794 2023年7月31日読了 瀬尾まいこさんの書く小説は、安心して読めるものが多い。いろんな理由で落ち込んだりしている人たちの再生の物語が多いからだろう。しかも周囲の人たちも、主人公も良い人たちばかりだ。 この物語もそうだった。この本を読んでPMS(月経前症候群)という病気を初めて知った。要するに月経前に一時的に心が乱れてしまい、苛立って抑えられなくなる。この物語の主人公の一人、藤沢さんが患っている病気である。 もう一人の主人公、山添くんが患っているのは、パニック障害。こっちの方は、聞いたことがあるが、詳しくはない。この物語を読んで、特に原因となることが無くても、そして一見明るくて[…]
麦二郎
9ヶ月前

『続けられる人になるための37のやめる』三浦孝偉

No.1793 2023年7月23日読了 特別この一週間が忙しかったわけでもないのですが、この本を読み終えて感想を投稿するまでに時間がかかってしまいました。このところ4冊続けて小説を読んでいたので、たまにはこういう自己啓発本を読みたくなり、Amazonでポチりました。本屋さんで見かけて、気になっていた本です。続けられない人だから、こういう本がとても気になります。続けられる人になりたいと、いつも思っているからです。 「継続は力なり」などと言いますが、そのとおりだと思います。これまでの人生の中で、継続してこそ何らかの成果が得られたという経験があります。続けた経験はあるのですが、続けられないものもあ[…]
麦二郎
9ヶ月前

『光のとこにいてね』一穂ミチ

No.1791 2023年7月17日読了 2023年本屋大賞第3位。一穂ミチさんの本は、『スモールワールズ』を2年前に初めて読み、この本が2冊目。『スモールワールズ』の後で、『砂嵐に星屑』や『パラソルでパラシュート』などが出版されて、気になっていたものの、結局読まなかった。今回は本屋大賞ノミネートと言うことで、図書館で順番待ちして読んでみました。もっと早く読みたかった、と言うのが正直なところですが、特に読む時期は本の内容とは無関係です。 この本の感想は、とても書きにくい。僕の薄っぺらい言葉で表現できるものでもないですし、この本の二人の主人公のことを理解できているかと言うとそうではないのです。描[…]
麦二郎
9ヶ月前

『コメンテーター』奥田英朗

No.1789 2023年7月8日読了 ハチャメチャなようで、結構真剣だったのかと思える精神科医伊良部が17年振りに復活。この本が出ると知った時には、迷わずすぐに買って読もうと思いました。読んでみて、期待どおりの面白さでした。 短編集なのですが、収録されている短編は全部で5つ。「コメンテーター」は、ひょんなことから伊良部がテレビ番組のコメンテーターになるというお話。看護師のマユミの人気で、視聴率は急上昇。しかし、コロナ禍に関する伊良部先生のコメントは、爽快としか言いようが無いです。 「ラジオ体操第2」は、世の中の理不尽なことに怒りを感じる気弱な人の物語。怒りを感じても、直接注意できないってこと[…]
麦二郎
9ヶ月前

『やり抜く人になるための戦略書』伊庭正康

No.1787 2023年7月2日読了 成功への近道は、やり抜くこと。つまり、目標に向かって継続する力こそが、成功へ結びつくもの。「継続は力なり」と言うが、まさにそのとおりだと思います。そんなやり抜く人になるための戦略が、いろいろ書かれている本です。 まず第1章は、成功するためには、能力や技術ではなくやり抜くことだということが書かれている章です。「やり抜くこと」自体に関することが書かれています。印象に残っているのは、気合や根性論ではなく、やり続けるための手段を考えることが重要だと言うことでしょう。 第2章は、「仕組み」によって継続できるということ。最上位の目標を常に見据えることやTKKの法則に[…]
麦二郎
9ヶ月前

『永遠と横道世之介(下)』吉田修一

No.1784 2023年6月17日読了 吉祥寺のかなり南にある下宿「ドーミー吉祥寺の南」を舞台として、横道世之介の3月から8月にかけてのなんでもない一日が綴られる。『横道世之介』を読んだ時には、続編があるとは思ってもいなかった。思ってもいなかった『続横道世之介』を読んで、まさか次があるとは思ってもいなかった。そんな思ってもいなかった3作目の「横道世之介」は、何と上下巻に分かれる長編小説だった。その『永遠と横道世之介』の下巻は、3日間であっと言う間に読み終えたのでした。 内容 『永遠と横道世之介(上)』は、残暑の9月から秋、冬を迎え冬真っ盛りの2月までの「なんでもない一日」を描いていた。この下[…]
麦二郎
10ヶ月前

『永遠と横道世之介(上)』吉田修一

No.1783 2023年6月14日読了 『横道世之介』は、2009年9月に出版され、2012年1月に読んだ。『続 横道世之介』は、2019年2月に出版されており、この本はそれから4年くらい経っている。『横道世之介』のインパクトが大きかったので、続編が出ると買って読んでしまう。今回は上下巻に分かれている長編だけど、やっぱり買ってしまった。それだけ魅力を感じているのだろうけど、おそらく横道世之介に会えるのはこの本が最後じゃないかと思う。 ある意味、完結編なのだと思っているからだ。 内容 上下巻に分かれていて、上巻を読み終えた。横道世之介のある1年間を描いているようで、上巻は9月から翌年2月の物語[…]
麦二郎
10ヶ月前

『老後資金2000万円の大嘘』髙橋洋一

No.1782 2023年6月13日読了 定年後の暮らしは年金だけでも大丈夫と言ってくれる心強い本。このところ小説ばかり読んでいる気がしますが、たまには経済のことも勉強しなくちゃと思って買った本でした。こういう本を読むのは、僕にとっては珍しいことなんですが。 著者は大蔵省に入省され、小泉内閣や第1次安部内閣のブレーンとしても活躍された方で、「ふるさと納税」や「ねんきん定期便」などの提案・実現をされてこられた方。なるほど、国の政策にも詳しい方だと思った。 内容 5つの章に分かれていて、約50項目のウソに関して本当のところを解説している形式になっている本。5つの章とは、年金問題や老後資金、国債、住[…]
麦二郎
10ヶ月前

『やさしい猫』中島京子

No.1781 2023年6月9日読了 出会ったのは、東京駅構内の本屋さん。ドラマ化されたようで、それを告げる帯が巻かれて平積みされていた。手に取ってみて、よっぽど即買いしようかと、それだけ惹かれるものを感じた。巻末の出版日をチェック。2021年8月。2年近く前だと言うことに気づき、図書館で借りることにした。検索してみたら、すぐに借りられる。借りて来たのは、先週の土曜日でした。 内容 スリランカ人と夫と死に別れた母子の家族3人の物語。と言うことは、本屋さんで手に取ってみた時と、NHKのサイトのドラマの記事で知っていた。母のミユキさんとスリランカ人のクマさんの出会いから、娘のマヤの語りで綴られて[…]
麦二郎
10ヶ月前

『天使も怪物も眠る夜』吉田篤弘

No.1779 2023年6月2日読了 2019年7月に出版された本。螺旋プロジェクトと称された8人の作家の8冊の本で、「海族」と「山族」の対立の絵巻物。時代は原始から未来へ続く物語で、この本は最終章で2085年頃から2095年頃までを舞台とした物語です。他の7冊の本は、2019年の秋には読み終えていたのですが、この本は途中で挫折してしまって、長い間本棚の積読本になっていました。積読本の中でも一番古いものだったのですが、今回「積読本一掃プロジェクト」を始めて、とうとう読み終えることができました。 ちょっと感慨深い心境になり、達成感に浸っています。ちなみに去年の11月に文庫本でも発売されているよ[…]
麦二郎
10ヶ月前

『DRY』原田ひ香

No.1778 2023年5月26日読了 原田ひ香さんの本は、これで15冊目になります。目をつけている文庫本が2冊、図書館で予約している単行本が3冊ありますから、20冊突破は近いかも知れません。最初に読んだのは、2018年2月のことで、『ランチ酒』でした。因みにこれまで沢山読んだ作家ベスト10には、まだ入っていませんが、20冊を超えるとランクインでしょう。 内容について いやいや、酷い話でした。そして、気持ちが悪い。原田ひ香さんの小説でここまで重かったのは、他には無かった気がします。主人公は浮気で離婚されて、子ども達と引き離され、金銭的にも困窮している藍という女性です。祖母と母が暮らす実家に戻[…]
麦二郎
11ヶ月前

『お金の超基本』坂本綾子

No.1777 2023年5月26日読了 時々こういう本、広く浅く大全的な本、を読みたくなる。雑誌のように買って手元に置いておくと、何だか安心して読まないまま放って置いたりする。この本も長い間「積読本」だった。 いざ読んでみようとページを捲ると、関係無いことや関心のないことが結構多いことに気付く。そういうページは思い切って読み飛ばした。無理矢理字面だけ追いかけても、多分時間のムダだろう。 内容について 全部で7章に分かれている。まず1章は、そもそもお金とは何かということが書かれている。お金の機能から価値、生涯のマネープランまで。 2章は「稼ぐ」こと。会社員の保障や給与・賞与の仕組み、退職時の手[…]
麦二郎
11ヶ月前

『飲まない生き方 ソバーキュリアス』ルビー・ウォリントン

No.1776 2023年5月24日読了 「ソバーキュリアス」という言葉は、初めて目にした言葉でした。アルコールを飲まない大人を「ソバキュリアン」と言うそうです。僕の場合は、コロナ禍以降は外で飲む機会はぐんと減りましたが、その分家で飲むことが増えて、意識して休肝日を週に数日作っています。もちろんアルコール依存症と言う認識は無いですが、この本を読んでいると、もしかして依存症か、なんて思うこともありました。 内容 医学的に飲酒が身体に良くないことを説き、飲まない生き方を勧める本なのかなと思っていましたが、そうではありませんでした。著者は医者ではなく、「ソバキュリ」ムーブメントを牽引されている方で、[…]
麦二郎
11ヶ月前

『汝、星のごとく』凪良ゆう

No.1775 2023年5月21日読了 2022年本屋大賞受賞作。2022年8月に出版されている本。発売された時に買って読もうかどうしようか迷って、結局買わなかったので、買いそびれてしまいました。なので、図書館で予約をして順番が回ってきて、読みました。本屋大賞発表以降、本屋さんには沢山平積みされていて、一昨日も本屋さんでその光景を見て、「凄いなあ」と思ったものです。 内容 瀬戸内海の島で暮らす井上暁海とその島に母とともに移住してきた青埜櫂の17歳から32歳くらいまでの物語です。青埜櫂は、母親から離れて暮らすため、東京に出て漫画の原作者になります。井上暁海は、島から出て暮らしたいと考えますが、[…]
麦二郎
11ヶ月前

『掬えば手には』瀬尾まいこ

No.1772 2023年5月10日読了 瀬尾まいこ作品は、結構沢山読んでいます。僕が読んだ作家さんで数的には10番目の作家さん。感覚的には女性の作家さんの本を沢山読んでいる気がしていましたが、ベスト10だけを見てみると、男女比は5対5なのでした。 瀬尾まいこ作品で初めて読んだのは、『天国はまだ遠く』で、2008年のことでした。たまたま映画も観ましたが、好きな作品です。今回読んだ『掬えば手には』で16作品目です。 作品全般で言えるのは、やさしい物語、ほっこりする物語、良い人しか出て来なくて安心して読める物語、こういうのが瀬尾まいこ作品に言える特徴なのかも知れません。文章も読み易くて、抵抗を感じ[…]
麦二郎
11ヶ月前