『ラジオ・ガガガ』原田ひ香

麦二郎
麦二郎

No.1797 2023年8月13日読了

『ラジオ・ガガガ』というタイトルは、素晴らしいと思う。
まさにラジオはガガガっていうイメージがするからだ。
僕がラジオを聴いていたのは、高校生くらいの頃だったろうか。
もちろん、オールナイトニッポンという番組も聴いたことはあるが、それほど熱心なファンではなかった。

僕が一時期のめり込んでいたのは、海外の短波放送を聴くという趣味だった。
雑音がひどい中、ダイヤルを回して音がするところで耳を澄ます。
どこの国の放送かを確認して、視聴したことを郵送で報告する。
BCL(Broadcasting Listener)ブームは、1970年代だったみたいで、僕も海外の放送局から送られて来るベリカード(Verification Card)を集めていたものだ。
短波放送のイメージが、僕にとっては「ガガガ」なのだ。

ラジオのイメージは、他にもある。
僕だけかも知れないけれど、何となく「独りの時間」というイメージがする。
テレビは家族で楽しむものだったが、ラジオは僕の中では独りで楽しむものだった。

この本は、第1話から第6話までのラジオにまつわる話で構成されている。
個々の話に特段繋がりは感じなかったので、ラジオドラマのような感じで「話」という言葉を使っているのかも知れない。

一つ一つの話については触れないけれど、一番良いなと思ったのは、第6話だろうか。
タイトルは「音にならないラジオ」。
ラジオのシナリオライターを目指している主人公の話。
会社を辞めてアルバイトをしながら脚本を書いている主人公は、某放送局の新人賞を受賞する。
担当プロデューサーが決まるが、受賞作が音になるまでに相当の手直しが加わり、なおかつその後沢山の企画案を出すが不採用となってしまう。
彼女とは5年頑張って駄目だったら、就職して結婚する約束である。

話の全体は書かないけれど、終盤は前を向けるちょっと良い話のように感じた。
そして振り返ってみると、6つの話はそれぞれに違った面白さがあったのではないかと思えた。
さすが原田ひ香さん。
これからも、まだまだ原田ひ香作品を読む予定だ。
まだ読んでいない作品は、図書館や文庫本で読むことにしよう。

麦二郎

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