『やさしい猫』中島京子

麦二郎
麦二郎

No.1781 2023年6月9日読了

出会ったのは、東京駅構内の本屋さん。
ドラマ化されたようで、それを告げる帯が巻かれて平積みされていた。
手に取ってみて、よっぽど即買いしようかと、それだけ惹かれるものを感じた。
巻末の出版日をチェック。2021年8月。
2年近く前だと言うことに気づき、図書館で借りることにした。
検索してみたら、すぐに借りられる。
借りて来たのは、先週の土曜日でした。

内容

スリランカ人と夫と死に別れた母子の家族3人の物語。
と言うことは、本屋さんで手に取ってみた時と、NHKのサイトのドラマの記事で知っていた。
母のミユキさんとスリランカ人のクマさんの出会いから、娘のマヤの語りで綴られて行く。
最初の出会いは、東日本大震災のボランティア。
そして、ミユキさんは自宅の近所でたまたま警官の職務質問を受けているクマさんと再会する。

このあたりまで読んでいたら、ちょっと変わった家族の幸せな物語かなと思っていた。
何せタイトルが『やさしい猫』なのだから、猫を飼って家族になる話かと思っていた。
そして、ミユキさんとクマさんは二人の距離を縮めて行く。

でも、ある局面から、物語はがらりと様相を変えてしまった。
名古屋入管の事件を思い出した。
この物語は入管の問題を表現した作品だったのです。
途中からページをめくる手が止まらなくなってしまった。
後半の半分は一気読み。

名古屋入管の事件は、何とも酷い事件だと思っていたけれど、その実態は知らなかった。
それをこの本を読んで初めて知ることになった。

最後まで一気に読んで、とても感動したのと、自分の無知さを思い知った気がした。
日本が抱えている問題の一つの真実を、思い知らされてしまった気がした。

それから…

ネットで入管の問題を検索してみた。
いろいろ出てくる。
この本にも登場する、牛久にある収容所もすぐに検索できる。
そこに通うボランティアの方がいらっしゃることも。

そして今日は、改正入管法が参議院本会議で可決され、成立した日だった。
何と言う偶然なんだろうと思ったけれど、残念ながら前日に大もめしていたことも、僕は知らなかった。
自分事ではないから、事件が起きていたことは知っていたし、何だかもめていることも知っていたが、本当のところを知ろうとはしていなかった。

同様なことは、まだまだ沢山あるのではないか。
社会とか政治とか、そういうことに対してあまり興味を持っていなかったのではないか。
そういう気がして、これからはもう少しアンテナを高くしておこうと思った。

麦二郎

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