小説

『DRY』原田ひ香

No.1778 2023年5月26日読了 原田ひ香さんの本は、これで15冊目になります。目をつけている文庫本が2冊、図書館で予約している単行本が3冊ありますから、20冊突破は近いかも知れません。最初に読んだのは、2018年2月のことで、『ランチ酒』でした。因みにこれまで沢山読んだ作家ベスト10には、まだ入っていませんが、20冊を超えるとランクインでしょう。 内容について いやいや、酷い話でした。そして、気持ちが悪い。原田ひ香さんの小説でここまで重かったのは、他には無かった気がします。主人公は浮気で離婚されて、子ども達と引き離され、金銭的にも困窮している藍という女性です。祖母と母が暮らす実家に戻[…]
麦二郎
5日前

『汝、星のごとく』凪良ゆう

No.1775 2023年5月21日読了 2022年本屋大賞受賞作。2022年8月に出版されている本。発売された時に買って読もうかどうしようか迷って、結局買わなかったので、買いそびれてしまいました。なので、図書館で予約をして順番が回ってきて、読みました。本屋大賞発表以降、本屋さんには沢山平積みされていて、一昨日も本屋さんでその光景を見て、「凄いなあ」と思ったものです。 内容 瀬戸内海の島で暮らす井上暁海とその島に母とともに移住してきた青埜櫂の17歳から32歳くらいまでの物語です。青埜櫂は、母親から離れて暮らすため、東京に出て漫画の原作者になります。井上暁海は、島から出て暮らしたいと考えますが、[…]
麦二郎
先週

『掬えば手には』瀬尾まいこ

No.1772 2023年5月10日読了 瀬尾まいこ作品は、結構沢山読んでいます。僕が読んだ作家さんで数的には10番目の作家さん。感覚的には女性の作家さんの本を沢山読んでいる気がしていましたが、ベスト10だけを見てみると、男女比は5対5なのでした。 瀬尾まいこ作品で初めて読んだのは、『天国はまだ遠く』で、2008年のことでした。たまたま映画も観ましたが、好きな作品です。今回読んだ『掬えば手には』で16作品目です。 作品全般で言えるのは、やさしい物語、ほっこりする物語、良い人しか出て来なくて安心して読める物語、こういうのが瀬尾まいこ作品に言える特徴なのかも知れません。文章も読み易くて、抵抗を感じ[…]
麦二郎
3週間前

『自転しながら公転する』山本文緒

No.1771 2023年5月8日読了 山本文緒さん作品は、これで3冊目。最初に読んだのが『アカペラ』で、2013年のこと。それから長い時間が経って、亡くなられたことを知り、『無人島のふたり』を読んだのが、今年の1月のことだ。だから、まだまだ読み込んでいない作家さんなのだけど、この『自転しながら公転する』を読んでみて、もっと読みたくなったのでした。 内容 主人公の都は、牛久大仏に近い茨城県のアウトレットモールの洋服屋さんに勤める30代前半の女性、独身。この設定からして、その倍くらいの年齢の男性が読む本じゃないかも知れないと、恐る恐る読んだせいか、最初はページが進みませんでした。ゴールデンウィー[…]
麦二郎
3週間前

『ある男』平野啓一郎

No.1767 2023年4月29日読了 そんなに時間が経っていないと思っていたのだけど、著者の本を初めて読んだのは、読書記録を調べてみると2019年の秋だった。読んだのは、『マチネの終わりに』だった。読むのに時間がかかる長い小説だったけれど、印象は強かったと思う。今となっては、そのストーリーの詳細を思い出すことはできないけれど。 内容 小説なので、ネタバレにならない程度に書こう。本の帯に書いているコピーだ。「愛したはずの夫はまったくの別人だった」そう、そういう物語だ。その謎をこの物語の主人公、弁護士の城戸が追いかける。 事件性のあるミステリー物ではなく、ある男や本人の人生を描き出している物語[…]
麦二郎
先月

『街とその不確かな壁』村上春樹

No.1766 2023年4月26日読了 村上春樹さんの久々の長編小説が出ることを、その直前に知り、Amazonで予約していました。そして、発売日当日に届き、その翌日頃から読み始めました。 村上春樹さんの小説は全部読んでいるわけではないです。いわゆるハルキストではないのですが、最近は新刊が出ると読んでいます。たぶん、2013年頃の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』あたりからでしょうか。この『街とその不確かな壁』が6年振りとかですから、新刊が出るとと言うのが適切かどうかは自信がありませんが。 過去にも新刊が出て、単行本を買ったものの、読まずに挫折したものもいくつかあります。濃密だから、[…]
麦二郎
先月

『サンドの女 三人屋』原田ひ香

No.1762 2023年4月5日読了 今月2冊目の読了本。連続して原田ひ香作品でした。シリーズ最初の『三人屋』では、三女の朝日が喫茶店、次女のまひるが讃岐うどん屋、長女の夜月がスナックを営んでいた。朝昼夜交代で、父親から譲り受けた店で。「シリーズ」と書いてしまったが、次回があるのかどうかは不明だったりする。この『サンドの女 三人屋』は、2021年2月に出版されていて、割と新しい。続編は今年かも知れないし、ずっと先かも知れないし、これで終わりかも知れない。 この本の中身 お店の経営形態は、ちょっと変わっていた。三女の朝日が就職したため、次女が朝から昼にかけてサンドイッチを販売しているという形態[…]
麦二郎
先月

『アイビー・ハウス』原田ひ香

No.1761 2023年4月1日読了 初出は、2012年の『群像』。2013年に出版されているので、10年以上前の作品と言うことになる。今回読んだのは、講談社文庫。文庫本ではたまに見かけるが、カバーの上に新しいカバーが掛かっている。新しいカバーは、この物語に登場するふた組の夫婦、4人の人物の関係がイラストで描かれていて、物語の内容を示している。 内容 3階建ての一軒家には、蔦が絡まっていて、そこで暮らす4人の間では「アイビー・ハウス」と呼ばれている。1階は共同のスペース。2階が派遣プログラマーの一樹35歳と喫茶店アルバイトの未世子32歳の夫婦が暮らす場所。3階には、会社員の隆35歳とフリーラ[…]
麦二郎
2ヶ月前

『神さまのビオトープ』凪良ゆう

No.1760 2023年3月29日読了 凪良ゆうさんは、BL(ボーイズラブ)作品の作家としてデビューし沢山の著作があったが、一般文芸小説作品として2017年に、この作品を刊行された。本屋大賞の『流浪の月』を読み、『わたしの美しい庭』、『滅びの前のシャングリラ』と読んだのですが、過去の作品を読みたくなって、この本を読んだと言うわけです。最新刊は『汝、星のごとく』ですが、刊行された時に買いそびれたので、図書館本を予約しているところです。 独自の世界観があり、読み出したら引き込まれてしまいます。 この本の内容 この本の主人公は、鹿野うる波という女性。夫に事故で先立たれて、夫の幽霊と一緒に暮らしてい[…]
麦二郎
2ヶ月前

『ギリギリ』原田ひ香

No.1757 2023年3月19日読了 3日前に読み終えた本のことを、まだ書いていなかったことに気付いたので、書いておくことにします。このところ結構沢山読んでいる原田ひ香さんの作品です。この本は文庫本ですが、2018年11月に出版されているので、結構古い作品です。単行本としては、2015年なので8年前の作品ということになります。 この本の内容 夫を亡くした瞳さんと、再婚相手の同級生の健児さん、そして亡くした夫の母の静江さん、この3人の視点で描かれている物語です。ちょっと微妙な関係です。再婚相手の健児さんと、前夫の母親の静江さんが結構仲が良かったりするのですから。 かと言って、ほんわかとした温[…]
麦二郎
2ヶ月前

『一橋桐子(76)の犯罪日記』原田ひ香

No.1755 2023年3月14日読了 読書の楽しみは、「面白かった」「良かった」「感動した」などと思える本と出会うことができるところでしょうか。重厚長大なテーマだけが感動的なわけではなく、ユーモラスな作品だけが面白いと思うわけでなく、感じることはそれぞれ複雑なのですが、いずれにしても「読んで良かった」と思える本に出会えることは、とても嬉しいことです。 この本は、久々のヒットです。読者としての立場から見たヒット作なのです。このところ原田ひ香作品で文庫本になった本を買い漁っている感じですが、ますますいろいろ読んでみたくなる本でした。 この本の内容 主人公は76歳ですから、そこそこの高齢者。血の[…]
麦二郎
2ヶ月前

『ワンダーランド急行』荻原浩

No.1754 2023年3月13日読了 荻原浩さんの本は、新刊が出るとすぐに買って読むことにしています。奥さんも好きな作家なので、二人で交代で読むので、経済的かも知れません。前に読んだのは巨大カマキリが出てくる『楽園の真下』で、2021年の夏でしたから、かなり久々の荻原浩作品です。長編で、400ページ超の分厚い本です。 この本の内容 ある朝、主人公は通勤とは逆方向の電車に乗ってしまいます。そこから始まる異世界(ワンダーランド)の旅というのが、この本の内容です。良くありそうなお話だと思います。良くありそうなのは、通勤とは逆方向の電車に乗りたくなることです。現実からの逃避でしょうか。 この物語は[…]
麦二郎
2ヶ月前

『ゆうべの食卓』角田光代

No.1753 2023年3月4日読了 読書メーターに登録した読んだ本の著者ナンバー1が、実は角田光代さんです。読んだ本の数は、68冊とダントツのトップです。第2位は伊坂幸太郎さん、40冊。第3位が、荻原浩さんで、33冊と続きます。 角田光代さんは、初期の何作か読んでないものがあるものの、出版された本のほとんどを読んでいます。ただ、最近の作品は読めてなくて、この『ゆうべの食卓』はかなり久しぶりに読んだ作品です。 この本の内容 雑誌「オレンジページ」の2020年7月2日号から2023年2月17日号に連載された短編小説を集めたものです。3つの短編で1つの物語という形になっています。物語は11収録さ[…]
麦二郎
2ヶ月前

『ランチ酒 今日もまんぷく』原田ひ香

No.1752 2023年3月1日読了 仕事が忙しかったせいか、ずっとブログを更新できませんでした。書いた日と読んだ日が、あまりにもかけ離れてしまうので、投稿日付を調整しておくことにします。 原田ひ香さんの小説をいくつか読んできましたが、今や気になる作家さんの一人です。過去1年間に読んだ本の著者のナンバー1です。読書メーターに登録している本の全期間で言うと、まだまだですが、7冊も読んでいます。今年はもっと読むだろう作家さんです。 この本の内容 ストーリーには触れませんが、短編でありながら、お話は繋がっています。なので、「ランチ酒シリーズ」の2作目を読んで、すぐにこの3作目を読みたくなったのです[…]
麦二郎
3ヶ月前

『ランチ酒 おかわり日和』原田ひ香

No.1751 2023年2月25日読了 グルメドラマと言えば、「孤独のグルメ」というイメージで、要するに美味しいお店で美味しいものを食べるだけ、そんな先入観があるかも知れません。この小説は、おいしいランチとお酒だけの小説ではありません。このシリーズの始まりの『ランチ酒』は残念ながらストーリーを忘れてしまいましたが、この本を読んで、一連のストーリーがある長編小説だと感じました。 この本の内容 ネタバレになるので、小説のストーリーについては詳しく書かないことにします。主人公の犬森祥子は、「見守り屋」という変わった職業です。そう言う意味では、原田ひ香さんの「職業小説」のジャンルにも入りそうです。「[…]
麦二郎
3ヶ月前

『人生オークション』原田ひ香

No.1740 2023年1月27日読了 原田ひ香さんのお仕事小説でした。ちょっと変わったお仕事が特徴かも知れません。短編小説が二つ収録されています。 最初は本のタイトルになっている「人生オークション」です。主人公の叔母さんが離婚して一人になり、オークションで生計を立てるという話で、主人公がそれを助けるのです。「人生」が付いているのは、山のような荷物をオークションで減らして行く、ミニマリストではないのですが、減らした分だけまさに人生が軽くなって行く話なのです。お仕事と言って良いかどうかは、迷うところです。 もう一つの話「あめよび」は、ラジオ番組のハガキ職人と付き合っている主人公の話です。主人公[…]
麦二郎
4ヶ月前

『夏の体温』瀬尾まいこ

No.1736 2023年1月20日読了 「夏の体温」と「魅惑の極悪人ファイル」、「花曇りの向こう」の3つの短編集。最後の短編は、特に短くて10ページ弱。 どれも「ともだち」をテーマにした作品だと思った。「夏の体温」は1か月以上入院している小学校3年生が主人公。その病院には身長が伸びない子供たちが検査入院してくる。ほとんどは主人公よりずっと年下の子たちなのだけど、ある日同学年の子が入院することに。 「魅惑の極悪人ファイル」が一番面白かった気がする。大学生の小説家が、悪い人をテーマにした小説を書こうと、「腹黒」というあだなの大学生に取材する話。主人公の小説家は女性で、「腹黒」は男性なのだけど、恋[…]
麦二郎
4ヶ月前

『リバー』奥田英朗

No.1719 2022年11月12日読了 約650ページの大作でしたが、飽きさせないのは、さすが奥田英朗さん。久々長編小説を楽しんで読むことができました。 栃木県と群馬県の県境を流れる渡良瀬川を舞台とした小説です。ある日渡良瀬川の河川敷で若い女性の死体が発見されます。十年前の連続殺人事件と同じ手口の殺人事件でした。栃木と群馬の両県の警察が動き始め、3人の容疑者が浮かび上がります。刑事達と退任した元刑事、十年前の被害者の父親がそれぞれに犯人を追いかけるミステリーです。 ミステリー作品なので、これ以上は語りません。それにしても長い小説でしたが、飽きないで読むことができたのは、奥田英朗さんの上手さ[…]
麦二郎
6ヶ月前

『神曲』川村元気

No.1714 2022年10月18日読了 なんてタイムリーな作品だろうかと思ったのは、6月に読んだ『同志少女よ、敵を撃て』の時と同じでした。両方ともタイムリーな出来事が起こる前に書かれている作品なので、それもまた不思議だと思いました。 ある家族が宗教に巻き込まれていき、親が信者となったがために自分も信じようとする2世信者が描かれています。今現実に問題視されていることほど、悲惨な状況ではありません。少なくとも献金によって家庭が崩壊したとか、子供が自殺に追い込まれたとか、そういう場面はありません。お金の問題や家庭崩壊の問題などではなく、心の問題と言った方が良いのかも知れません。 この物語に描かれ[…]
麦二郎
7ヶ月前

『おいしいごはんが食べられますように』高瀬隼子

No.1712 2022年10月2日読了 芥川賞受賞作品は、あまり読まない方だと思います。何となく難しいイメージがあって、読まず嫌いかも知れません。受賞作品だから読んでみようという気にならないのです。本屋大賞受賞作は読んでみたいと思うのですが。でも、この本は読みたくなりました。何となく面白そうな予感がしました。 読んでみて、なるほどこういう小説だったのか、という感じです。期待どおりと言えば、期待どおりです。職場の人間関係を描いているところが、何だかどこかにありそうな感じがして、面白いのです。 物語は食べることに無頓着な男性社員二谷と、料理上手だけど仕事はできない女性社員芦川、そして仕事ができて[…]
麦二郎
8ヶ月前