『星を編む』凪良ゆう

麦二郎
麦二郎

No.1839 2024年1月30日読了

「春に翔ぶ」と「星を編む」、「波を渡る」の3編の小説が収録されている。
凪良ゆうさんの小説は、何だかんだでだいたい単行本が出たら買って読んでいる。
『流浪の月』も初めて読んだ、他には無さそうな小説だったと思うが、『汝、星のごとく』はある意味衝撃的な作品だったと思う。
こんなにすごい小説を書けるなんて、凪良ゆうさんって何者なんだと思ったものだ。

あれから少し時間が経って、すっかり『汝、星のごとく』を忘れていた気がする。
でも、この『星を編む』が出版されて、迷わず買って読みたいと思った。
そして、今回読んでみて、『汝、星のごとく』のスピンオフだと聞いていたけれど、サイドストーリーかと言うと、そうではないと思った。
これは続編と言うか、完結編だと思った。

何よりも最初の「春に翔ぶ」の北村先生の秘話が素晴らしい。
こういうことがあっての北村先生なのかと、腑に落ちないところが納得できた気がする。
こんなすごい人が居るのだろうかと、返って怪しんでみたくなる感じだ。
壮絶な生き方かも知れない。

「星を編む」は、二人の編集者の話。
この物語こそがスピンオフに近いと思った。
『汝、星のごとく』に登場する人物なんだけど、ちょい役で済みそうな登場人物かも知れない。
いや、女性の方はそうでもないかな。
二人の心の動きや微妙な夫婦関係が面白かった。

最後の「波を渡る」こそが、完結編だと思う。
印象に残った文章は、これだ。

留めておきたい喜びも悲しみも押し流され、どれだけ抗おうと朝陽と共に次のページがめくられ、また似たような一日がはじまる。それが現実を生きるということだ。物語のように美しいエンドマークはない。積み上がった記憶は整理も回収もされず、ある日、散らかったまま終わる。

本って、素晴らしいものだと思った。

麦二郎

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