小説

『ずっとあなたが好きでした』歌野晶午

No.1665 2022年1月22日読了 この本は、なぜかずっと本棚の端っこに積ん読されていました。660ページくらいある、とても分厚い本だったからかも知れません。歌野晶午さんの本なので、楽しみを取っておきたかったのかも知れません。買ったのは、2018年2月3日頃のことらしいです。今となっては定かではありませんが、当時は買ったらすぐに写真を撮っていましたので、その写真の日付がそうなんです。 50ページ前後の短編が13収録されている本です。タイトルどおり、全ての短編は「恋」がテーマです。青春時代あり、ネットあり、初老時代ありという、ほんとうにいろいろな「恋」の物語です。でも、これ以上は語れません[…]
麦二郎
2年前

『ワンダフル・ライフ』丸山正樹

No.1664 2022年1月10日読了 「読書メーター OF THE YEAR 2021」の第一位となった本です。本屋さんに並んでいるのを見た時、気になっていました。多くの方が読んでいらっしゃるようなので、年末に本屋さんで買って、読むことにしていました。 昨日から読み始めて、昨夜晩酌をしなかったら、そのまま1日で読んでいたかも知れないと思いました。300頁超の本ですが、初日で半分、そして今日は半分読みました。 ネタバレを含まないようにこの本の感想を書くのは難しいと思いますので、少しネタバレを含むことを予めお知らせしておきます。核心には触れないようにしますが。 読み始める前は、障がい者に関する[…]
麦二郎
2年前

年末年始に向けて本の買いだし

毎月月末に、クレジットカードのキャンペーンがあり、駅ビルのラスカ茅ヶ崎で5,000円以上の買い物をすると、プラス500ポイント貰えます。今年最後のキャンペーンは、24日から26日までの3日間だったので、25日に本の買いだしに行って来ました。買ったのは、以下の4冊です。 『ワンダフル・ライフ』丸山正樹登録している「読書メーター」の「読書メーターof the Year」第一位なので読んでみたくなりました。『倒産続きの彼女』新川帆立前作『元彼の遺言状』が面白かったので、新作も読むことにしました。『鎌倉うずまき案内所』青山美智子『猫のお告げは樹の下で』青山美智子上記2冊以外は買う本は決めていなかったの[…]
麦二郎
2年前

『三千円の使いかた』原田ひ香

No.1653 2021年11月25日読了 以前から本屋さんや読書メーターで目にしていた本で、一番読んでみたいものだと思っていた本を今日読了しました。第1話から第6話までの6つの短編で構成されています。 物語は祖母、母、娘二人と父という家族を中心に展開して行きます。それぞれの家族視点で物語が進んで行くのです。第1話は、IT関連会社に勤める末っ子が中心の物語です。タイトルになっている「三千円の使いかた」というタイトルです。「ひとは三千円の使いかたで人生が決まるよ」という祖母の言葉から始まります。象徴となっているのは、ティーポットです。ただ単に安い物を使うか、それともずっと使える高級な物を使うかと[…]
麦二郎
2年前

『こころ』夏目漱石

No.1647 2021年10月29日読了 読書熱が高じて、昔読んだ名作を読み直してみようかと思い買っておいたのは、振り返ると2018年6月のことでした。何と、3年以上も積ん読になってしまっていたようです。これより更に数か月前に買った本も積ん読状態なので、一番古いわけではありませんが。積読本を0にしようと言うことで、頑張って読んでいたのですが、今月は小休止状態です。少しでも減らしておこうと、この本を読むことにしました。 読書のペースも小休止状態だったので、少しずつしか読まなかったせいもあり、やっと10月の終わりに読み終えました。通勤電車の往復が僕にとっては絶好の読書タイムなんですが、テレワーク[…]
麦二郎
2年前

『ペッパーズ・ゴースト』伊坂幸太郎

No.1645 2021年10月13日読了 この本が10月1日発売と知り、Amazonで予約して楽しみにしていました。分厚い本なので、通勤の往復で読むのを避けていて、読了が少し遅くなりましたが、今日読み終えました。期待どおりの伊坂さんらしい物語でした。グラス・ホッパー的なちょっと怖い部分と他の作品のちょっとユーモラスな味わいもあり、これまでの作品が複合されたような感じにも思われました。 前半は物語はゆっくりと進んで行きますが、徐々にテンポが上がって、最期はダッシュみたいな感じでした。これまでの伊坂さんの本は、だいたいそういう感じで前半は時間をかけて読み、終盤は一気読みのようになってきます。 こ[…]
麦二郎
2年前

『月曜日の抹茶カフェ』青山美智子

No.1642 2021年10月1日読了 8月に文庫本を読んだ『木曜日にはココアを』の続編にあたる本のようです。確かに前作の登場人物が出てきます。前作同様「マーブル・カフェ」という喫茶店を舞台にした物語ですから、当然と言えば当然かも知れません。「マーブル・カフェ」の定休日に抹茶を出す「抹茶カフェ」なのですから。 前作も同様でしたが、とても短い20ページ弱の短編で構成されています。主人公は短編毎に変わりますが、前の短編に登場した人が次の短編で主人公になる、みたいな緩い繫がり方をしています。12か月それぞれの月という設定で1年間ぐるりと回って、元の話に戻るようなスタイルです。 ついていないと思って[…]
麦二郎
2年前

『東京奇譚集』村上春樹

No.1639 2021年9月20日読了 奇譚とは、珍しい話、不思議な物語という意味。ありそうにない不思議な物語から、あるかも知れないと思えるくらいの不思議な話まで、幅はあると思います。でも、珍しさや不思議さがメインではなく、そのことと対峙する人の物語がメインです。 不思議なくらい偶然が重なることは、ありそうな不思議かも知れません。「偶然の旅人」は、孤独なピアノ調律師が主人公。タイトルどおり、いくつかの偶然の話です。「ハナレイ・ベイ」は、サーファーの息子を亡くした母親の人生の物語。「どこであれそれが見つかりそうな場所で」は、マンションの高層階の階段で失踪してしまった夫を探す妻と夫捜しを手伝うボ[…]
麦二郎
2年前

『東京會舘とわたし』辻村深月

No.1637〜1638 2021年9月19日読了 上下巻分のレビューを一度にすることにしました。東京會舘といろいろな人の関わりを大正から令和まで描いた物語です。上巻は、大正から昭和39年までの物語ですが、この後東京會舘は建て替えられるので、上巻は旧館の頃の物語とされています。下巻は新館と2回目の建て替えを経た新新館までですが、2回目の建て替えまでの物語が中心です。 東京會舘には数回行ったことがありますが、とても料理が美味しいことを記憶しています。この物語はノンフィクションを土台としているフィクションですが、料理が美味しいのは読んでみてなるほどと納得しました。東京會舘といろいろな縁で繋がってい[…]
麦二郎
2年前

『君がいないと小説は書けない』白石一文

No.1634 2021年9月5日読了 主人公は編集者から小説家になった人物。奥さんとは別居して長いが、離婚は成立していない。そして離婚後に知り合った女性ことりとずっと暮らしていて、実質的には彼女が妻である。 物語は全編主人公の語りで綴られて行きます。著者の自伝的小説のようなので、著者の語りによる物語ということができるかも知れません。主人公が出版社の編集者であった時代の回想や今の心情に関する語りが、延々と続いて行きます。何か劇的な出来事があったりするわけではありません。奥さんと別居するに至ったことについては、詳細は語られていないと思います。 僕が長編小説で好きなのは、ストーリー展開が速い小説な[…]
麦二郎
2年前

『よるのふくらみ』窪美澄

No.1633 2021年9月2日読了 間違い無く恋愛小説のジャンルに入るでしょうが、一つ前に読んだ『ラストレター』とは違った恋愛小説です。どこが違うのかということは、説明できないのですが、こちらは窪美澄さん的恋愛小説なんだろうと思います。 主人公は3人または4人。6つの短編と言うか、6つのパートに分かれていて、それぞれ視点が変わるという意味です。ある兄弟と幼なじみの女性が3人で、弟とからむバツイチ子持ち女性が4人目です。実際は好き合っている男女ではなく、たまたまの偶然か、神様のイタズラか、違うカップルが誕生することは現実にはあることだと思います。それにだんだんと気付き始め、どうしようもなくな[…]
麦二郎
2年前

『ラストレター』岩井俊二

No.1632 2021年9月1日読了 ほとんどは昨日のうちに読み、残った30ページばかりを今朝読み終えました。どんな終わり方をするのだろうと、気になりましたが、読後感は悪くなかった気がします。 主人公は、昔付き合っていた彼女をずっと好きで、彼女の物語を書こうとする売れない小説家です。心残りと言うのでも無く、後悔の気持ちも無いわけじゃないですが、心をずっと前の中学時代に残してきた感じです。そんな物語なのかなと思います。敢えてはっきりとは書きませんが、ラストはそんな感じがしました。そしてまだまだずっと前の中学時代に縛られて、主人公は生きて行くのかも知れません。 こういう物語は好き嫌いがあるかも知[…]
麦二郎
2年前

『水に眠る』北村薫

No.1627 2021年8月11日読了 20ページ程度の短編小説が10編収録されている短編小説集です。書き下ろしが1作、後は「オール讀物」掲載作品です。 「恋愛小説」は、誰からのものともわからない電話がかかってきて、音楽がかかっていて、それに聴き惚れるという不思議な物語です。「水に眠る」は、チリチリとするような切ない味のウィスキーの水割りととあるバーを舞台にした物語です。「植物採集」は、彼女からプレゼントされたと思われるネクタイと全く同じものを見つけ、こっそりそれを取り替える話です。「くらげ」は、個人空調装置の商品名で、その空間に人が閉じ籠もって行く話です。「かとりせんこうはなび」は、奥さん[…]
麦二郎
2年前

『楽園の真下』荻原浩

No.1624 2021年8月7日読了 本の帯に「読み始めたらとまらない、サイエンスサスペンス長編」と書かれていましたが、そのとおりでした。何となくこの3連休は毎日1冊ずつ本を読もうと決めていて、初日にこの470ページ程度ある分厚い本が読めるかどうか、自分でも自信が無かったのですが、一気に読んでしまいました。それだけ面白い小説でした。こんな小説も書けるのかと、荻原浩さんの抽斗の多さには驚くばかりです。 とある「日本でいちばん天国に近い島」で、原因不明の自殺者が多発していて、主人公のフリーライターが取材に訪れるところから、物語は始まります。その原因は自然豊かなこの島で、ある生き物が急激な進化を遂[…]
麦二郎
2年前

『スモールワールズ』一穂ミチ

No.1622 2021年8月4日読了 このところビジネス本中心の読書でしたが、この前に久しぶりに小説を読んで、小説が読みたくなりました。本屋さんで見かけて気になっていたこの『スモールワールズ』を読むことにしました。読み始めたのは、昨日から。通勤の往復で読みました。 6つの短編によって構成されている短編集です。6つの話は別々の話です。ある夫婦と少年の話に始まり、姉弟、母と娘の家族、加害者と被害者の妹、父と子、先輩と後輩の6つの物語です。それぞれにとても面白く、面白さはそれぞれ違っていて、中にはいろんな意味で怖い話もあります。心温まる話もあれば、ミステリアスな物語もあり、それぞれが違った味わいの[…]
麦二郎
2年前

『木曜日にはココアを』青山美智子

No.1621 2021年8月2日読了 200ページくらいの文庫本なんですが、12の短編が収録されています。順番に主人公が変わりながら、物語が続いて行く形式の短編集です。ぐるりと回ったら、戻ってきます。とても面白くて、読み易くて、1日で一気に読んでしまいました。 青山美智子さんの本は、『お探し物は図書室まで』を5月頃読みました。この本も面白かったのですが、読みやすさから言うと、『木曜日にはココアを』に軍配が上がります。『木曜日にはココアを』がデビュー作のようです。 物語の舞台は、日本からオーストラリアへと移ります。著者の経歴を見ていたら、シドニーの日系新聞社の記者をされていた方でした。今は積読[…]
麦二郎
2年前

『52ヘルツのクジラたち』町田そのこ

No.1604 2021年6月20日読了 虐待を受けた子供の声を、仲間達には決して聞こえない52ヘルツの声になぞらえて書かれている物語です。主人公は、虐待を受けて育った女性で、虐待から救われた以降も決して人生は好転していません。友だちには恵まれているものの、アドバイスが耳に入らず目の前の幸せにしがみつこうとして、返って傷付いてしまいます。時折その回想が入ります。 主人公はある日少年と出会います。その少年も虐待を受けています。虐待のために声が出ません。ただし、主人公には聞こえるようです。誰も聞こえない52ヘルツの声が聞こえるのです。主人公はその少年を救おうとします。かつて自分が救われたように。 […]
麦二郎
2年前

『お探し物は図書室まで』青山美智子

No.1600 2021年5月5日読了 仕事のこと、つまり人生について、迷っている主人公が、ふとしたことでとあるコミュニティハウスの図書室を訪れます。そこで小町さんという司書から、おすすめの本を教わります。本の付録として羊毛フェルトを受け取ります。収録されている5つの物語に共通していることです。 何となく就職した朋香さんは、婦人服販売員です。何となく就職したと思っているので、仕事にうまく向き合えないようです。家具メーカー経理部に勤める諒さんは、アンティーク雑貨屋を夢見ていますが、遠い夢でしかないと思っています。元雑誌編集者の夏美さんは、育児のために編集の仕事を外され、悶々と仕事をしています。浩[…]
麦二郎
3年前
『犬がいた季節』伊吹有喜

『犬がいた季節』伊吹有喜

No.1594 2021年3月31日読了 3月31日、滑り込みで読み終えた本。犬と言えば、馳星周さんの『少年と犬』を1月末に読みました。あれは感動的な話であり、ちょっと悲しくなる物語でした。私も犬を飼っているので、「犬」の物語にはとても興味を持つのですが、反面悲しい物語ではないのかと、身構えてしまうこともあります。結局は読んでしまうのですが。この本も本屋さんで見かけて読みたいなと思っていたのですが、すぐには買わなかった本です。 物語は第1話から最終話までの6つに分かれています。最終話を除くと、昭和から平成12年までの物語です。主人公は18歳の高校生たち。いろんな時代の18歳の主人公たちが受験を[…]
麦二郎
3年前
『滅びの前のシャングリラ』凪良ゆう

『滅びの前のシャングリラ』凪良ゆう

No.1592 2021年3月15日読了 凪良ゆうさんの本は、この本で3冊目です。最初に読んだのが『流浪の月』で、次が『私の美しい庭』でした。本屋さんで見かけたこの本は、読もうかどうしようか迷ったのですが、やっぱり読もうと思い買ったのでした。最近は新刊が出ると必ず買う作家は、数少なくなってしまいましたが、その少ないうちの一人です。 ここからは、ややネタバレな内容を含みますので、まだ読まれていない方はご注意ください。ただ、ネタバレと言っても、ミステリーの謎解きをそのままバラしているような内容ではありません。 シャングリラとは、ジェームズ・ヒルトンの小説『失われた地平線』に登場する理想郷の名称で、[…]
麦二郎
3年前