『喫茶おじさん』原田ひ香

麦二郎
麦二郎

No.1821 2023年12月23日読了

主人公は、バツイチで無職、57歳のおじさん。
大手ゼネコンを早期退職して、退職金で喫茶店を開業するも、早々に潰してしまい、二番目の妻とは別居状態。
何ともふがいない設定の主人公だが、何となく脳天気感が漂っていたりする。
もちろん、自分の人生をそれなりに考えているようだ。
その場所は純喫茶。

そんな主人公の1年間の物語で、一月から十二月までの短編形式の物語とエピローグで構成されている。
最初はどうだろうという感じだったが、終盤に向かって徐々に面白さが増してくる感じ。
会社の同僚だった友人とか、前妻、別居中の妻と娘、開業する前に専門学校で知り合った女性、開業中に雇っていた大学生などが絡んで、物語は進んで行く。
ダメダメなおじさんだけど、どこか親しみを感じてしまうキャラクターだった。
純喫茶はどうやら実在のお店のようで、お店の名前は出てこないけど、場所と店の雰囲気でわかる人もいるみたいだ。
純喫茶で珈琲や食べ物を食べながら、自分の人生を考える主人公を描いている。

原田ひ香さんの小説には、シリーズ物が結構あるが、この物語はシリーズ化されるのだろうか。
ダメダメながらも、主人公はそれなりに考えて、再び喫茶店を開業しようとする。
そういう再生の物語なんだけど、その後を覗いて見たい好奇心は覚えるけれど、その後がわからない方が良い気もする。
シリーズ化されるかどうかは、著者のみぞ知る、かも知れません。

麦二郎

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