『夜空に浮かぶ欠けた月たち』窪美澄
No.1785 2023年6月28日読了
先日窪美澄さんの『夜に星を放つ』を読んで、非常に良かった印象があるので、この本が出版されていることを知り、さっそく買って読むことにしました。
タイトルも「夜」が共通で「月」と「星」が似通っています。
短編集なのも共通していますが、こちらの方がもっと繋がって、一つの物語になっていました。
6つの短編と短いエピローグで構成されています。
6つの短編の共通点は、喫茶店と「椎木メンタルクリニック」で、内容的には心を病んだ人達が主人公と言うことです。
「病んだ」と言う言葉は適切ではないかも知れません。
傷付き、心の風邪を引いてしまった人達を癒やし、そして自ら再生して行く物語です。
癒してくれるのは、喫茶店の店主純さんであり、「椎木メンタルクリニック」の旬先生とカウンセリングをしてくれるかおり先生です。
最初の話は、学校に行けなくなってしまった大学生が主人公です。
この物語の始まりの物語かも知れません。
次は忘れっぽくて締め切りを守れないサラリーマンが主人公で、仕事をしながらイラストを描いています。
3つ目の短編は、いつも重たい恋愛をして相手が離れて行ってしまう女性が主人公。
不妊治療をしてせっかく授かった娘を可愛いと思えない女性の話が、4つ目。
子どもを授かったのに、病気ですぐに亡くしてしまう夫婦の話は、5つ目の短編です。
そして最後は、育児放棄をしてしまう母親の話です。
きちんとした治療を受け、周りの人たちから癒されて、そして再生して行く物語ばかりですから、救いの無い話ではありません。
そもそも心が傷付き、風邪をひくことは、誰にでもあることだということが前提となっていて、そのとおりだと思います。
ただ、きっかけは何でもないことから、非常に重たいものまであります。
重たいものについては、読むのに時間がかかりました。
『夜に星を放つ』と並べて読むと良いかも知れません。
最近の窪美澄さんの作品は、これまでのものと、ちょっと変わってきたかも知れません。