連作短編

『月の立つ林で』青山美智子

No.1834 2024年1月20日読了 5章に分かれています。一つ一つは、完結する形になっていますので、どこかで繋がっている短編が5つ収められている本だと言えます。 主人公は、順番に長年勤めた病院を辞めた就活中の元看護師、夢を諦めきれない売れない芸人、娘が突然嫁に行ったバイクの整備士、早く自立したい女子高生、家族とのバランスに悩むアクセサリー作家の5人です。いろんな悩みや迷いを抱えている人たちです。タケトリ・オキナという男性のポッドキャスト『ツキない話』を聴いているという点で繋がっています。 青山美智子さんの作品は、いくつかの物語が微妙に繋がっている形のものばかりという印象です。繋がり方は緩[…]
麦二郎
2ヶ月前

『夜空に浮かぶ欠けた月たち』窪美澄

No.1785 2023年6月28日読了 先日窪美澄さんの『夜に星を放つ』を読んで、非常に良かった印象があるので、この本が出版されていることを知り、さっそく買って読むことにしました。タイトルも「夜」が共通で「月」と「星」が似通っています。短編集なのも共通していますが、こちらの方がもっと繋がって、一つの物語になっていました。 6つの短編と短いエピローグで構成されています。6つの短編の共通点は、喫茶店と「椎木メンタルクリニック」で、内容的には心を病んだ人達が主人公と言うことです。「病んだ」と言う言葉は適切ではないかも知れません。傷付き、心の風邪を引いてしまった人達を癒やし、そして自ら再生して行く物[…]
麦二郎
9ヶ月前

『ランチ酒 おかわり日和』原田ひ香

No.1751 2023年2月25日読了 グルメドラマと言えば、「孤独のグルメ」というイメージで、要するに美味しいお店で美味しいものを食べるだけ、そんな先入観があるかも知れません。この小説は、おいしいランチとお酒だけの小説ではありません。このシリーズの始まりの『ランチ酒』は残念ながらストーリーを忘れてしまいましたが、この本を読んで、一連のストーリーがある長編小説だと感じました。 この本の内容 ネタバレになるので、小説のストーリーについては詳しく書かないことにします。主人公の犬森祥子は、「見守り屋」という変わった職業です。そう言う意味では、原田ひ香さんの「職業小説」のジャンルにも入りそうです。「[…]
麦二郎
去年