『コメンテーター』奥田英朗
No.1789 2023年7月8日読了
ハチャメチャなようで、結構真剣だったのかと思える精神科医伊良部が17年振りに復活。
この本が出ると知った時には、迷わずすぐに買って読もうと思いました。
読んでみて、期待どおりの面白さでした。
短編集なのですが、収録されている短編は全部で5つ。
「コメンテーター」は、ひょんなことから伊良部がテレビ番組のコメンテーターになるというお話。
看護師のマユミの人気で、視聴率は急上昇。
しかし、コロナ禍に関する伊良部先生のコメントは、爽快としか言いようが無いです。
「ラジオ体操第2」は、世の中の理不尽なことに怒りを感じる気弱な人の物語。
怒りを感じても、直接注意できないってことは、多々あることだと思います。
今の世の中、注意なんかしたら、刺されてしまったり。
関わらないことがベストと思っていることに、ちょっと罪悪感を感じる物語かも知れません。
「うっかり億万長者」は、これが一番面白かった気がします。
デイトレーダーの物語で、なるほどと思いました。
相場が気になって仕方がなくなるってことは、どこか精神的におかしくなりそうな気がします。
「ピアノレッスン」は、この本の中では一番の良い話かも知れません。
どの物語を読んでも真理を突いているところが、奥田英朗さんの鋭いところだと思います。
人間の真理だと思います。
最後の「パレード」は、コロナ禍ならではのあるあるの物語でした。
長いコロナ禍は、リモートの良い部分をクローズアップしたかも知れませんが、人と人が直接向き合う機会を奪ってしまったのでした。
そんな中、やっぱり学生さんの被害は大きかったかも知れません。
全てがそれぞれ面白くて、味のある短編ばかりでした。
奥田英朗作品に外れ無しと実感しました。