『椿ノ恋文』小川糸

No.1823 2023年12月28日読了

『椿ノ恋文』は、小川糸さんのツバキ文具店シリーズの3作目。
鎌倉の二階堂辺りにあるツバキ文具店の店主鳩子さんが主人公です。
前作の『キラキラ共和国』は、2017年10月発売でしたから、6年振りの新作です。

鳩子さんと夫、その連れ子のQPちゃんの3人家族だったのが、小梅と蓮太朗の二人が増えて5人家族になっていました。
二人の育児のため、代書屋は休業していて、今回再開するという設定になっています。
鳩子さんは、先代の祖母の代書屋を引き継いでいて、依頼者が伝えられない思いを代わりに伝える手紙を書くのです。

手紙がモチーフになっている物語ですが、今回は祖母の道ならぬ恋と恋文が全編を通したモチーフになっています。
ツバキ文具店を訪れるいろいろな人たちと、その人たちが伝えたい気持ち、そして代筆した手紙によって物語は進行して行きます。
夫の連れ子のQPちゃんの反抗期も、どうなるんだろうと思わせるモチーフの一つです。

このシリーズを通して登場する人たちも、再び出てきます。
お隣に住んでいたバーバラ婦人は南仏に移住していて、物語の最後の方で帰郷して鳩子さん宅に泊まることになります。
バーバラ婦人を囲む女子会が始まり、途中で鎌倉宮にお参りすることになるのですが、その帰り道のバーバラ婦人の言葉が印象に残りました。

怖いことも、苦しいことも全部ひっくるめて、体験することを楽しむのが人生の醍醐味であり、遊園地のようなものだという意味の言葉です。
人生にはいろんなことがあるけれど、それを体験することを楽しむくらいの気持ちになりたいなと思いました。
年末のこの時期に読んだので、来年は楽しむことを考えよう、なんて考えながら読んでいました。

この物語には、いろんな思いを抱えている人たちが登場し、手紙という形でそれを伝えようとします。
伝えるまではいろいろな葛藤があったり、悩みがあるのですが、結局伝えることによって道は拓けて行くのです。
迷うより、やってみることなのだと思います。
道の先に光を見つけられるような、素敵な物語でした。

麦二郎

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