『月の立つ林で』青山美智子

麦二郎
麦二郎
2024年1月21日

No.1834 2024年1月20日読了

5章に分かれています。
一つ一つは、完結する形になっていますので、どこかで繋がっている短編が5つ収められている本だと言えます。

主人公は、順番に長年勤めた病院を辞めた就活中の元看護師、夢を諦めきれない売れない芸人、娘が突然嫁に行ったバイクの整備士、早く自立したい女子高生、家族とのバランスに悩むアクセサリー作家の5人です。
いろんな悩みや迷いを抱えている人たちです。
タケトリ・オキナという男性のポッドキャスト『ツキない話』を聴いているという点で繋がっています。

青山美智子さんの作品は、いくつかの物語が微妙に繋がっている形のものばかりという印象です。
繋がり方は緩やかな感じで、例えば後で繋がっていると知り衝撃を受けるような小説ではありません。
一言で言えませんが、優しく微妙な繋がり方なんでしょう。
ポッドキャストだけでなく、主人公同士の接点もどこかにあったりします。

この物語では、「タケトリ・オキナ」って誰だろうという疑問がずっとついてきます。
そして最後にそれがわかるのですが、衝撃とか意外性とか、ミステリアスなもので勝負している小説ではありません。
「やっぱりそうだったのか」という緩やかな、そしてちょっとした感動を覚えます。
今まで読んだ中では、一番良かったかなと思える青山美智子さんの作品でした。

ちなみに最新作の『リカバリー・カバヒコ』は、図書館の予約待ちです。
この本も図書館で借りてきました。結構長々と待ちました。
待った甲斐があった作品でした。

麦二郎

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