『残照の頂 続・山女日記』湊かなえ
No.1657 2021年12月16日読了
NHK BSのドラマでは、「山女日記」はシーズン3になっているのですね。
ちょっと確認してみると、この『残照の頂』の一つの短編を少し変えたようなストーリーがありました。
湊かなえさんと言うと、「イヤミスの女王」と呼ばれているそうです。「イヤミス」というのは、読んだら嫌になるミステリーの略です。
この「山女日記」シリーズは、そう言う意味では異色です。ほっこり系や爽やか系の話なんです。
とは言え、さすがミステリー作家さんです。ちょっとした謎が描かれ、物語の最後にはその謎が分かります。謎と言っても、事件性のある謎ではなく、良くありそうな謎だったりします。
4つの短編から構成されています。
「後立山連峰」は、65歳の女性とひょんなことで知り合った元山岳部の42歳の女性が主人公です。男性ガイドと二人の女性の登山途中の会話で描かれているのですが、65歳の女性はとても良い方だと思います。
20年くらい経って思い出す青春時代なんでしょうか。
二つ目の「北アルプス表銀座」は、かなりミステリーっぽい作品だったと思います。
表題作と言える物語です。
三つ目の「立山・剱岳」は、母と娘の登山です。
そして最後は、大学時代の友人同士の長い手紙形式で描かれている物語「武奈ヶ岳・安達太良山」です。
長い間登山から遠ざかっていた二人が、住んでいる場所の近くの山に登ったことを手紙に書き、交換するという形です。
どの作品も、過去に後悔や特別な思いがあり、そして今山登りを通じて、新たな生き方に気付くといった物語だと思いました。
極力ストーリーには触れずに感想を書くのって、とても難しいことだなと思いました。
でも、これからこの本を読む方に、ストーリーを紹介してしまうと、湊かなえさん作品の面白さが半減するような気がします。