『ウェルカム・ホーム!』丸山正樹

麦二郎
麦二郎

No.1706 2022年8月30日読了

「面白かった」と安易に言えない小説ですが、ページを先へ先へと捲りたくなる本ですし、読み易い文章です。
丸山正樹さんの本は、これで3冊目です。
前に読んだ『ワンダフル・ライフ』は、実に衝撃的だった印象があり、今回の作品のテイストはかなり違っていると思います。

この小説は、2012年から2018年にかけて「小説すばる」に掲載された作品を1冊の本にしたもので、書かれている時期は結構前のようです。
著者も「あとがき」に書かれていますが、その言葉を借りると、「特別養護老人ホームを部隊とした介護師の青年が成長していく姿を描いた物語で、コメディタッチの作品です。
なので、『ワンダフル・ライフ』よりも安心して読めた感じがします。

でも、題材はもっと深刻な社会問題であり、かつ身近な問題でもあります。
介護する側に回るか、介護される側に回るのか、両方を体験するか、個人的にはとても不安になる問題です。
幸い私の両親は子供に面倒をかけませんでした。両親とも、実に呆気なく逝ってしまったのです。
ある意味それは見習いたいほどでした。残されている人に、長い間面倒をかけたくないという気がします。
ただし、それは自分では選べないのです。

物語の終わり方は、続編を臭わせるものでした。
コロナ禍で介護施設は非常に厳しい状況に迫られているのですから、この小説の続きがあるとしたら、主人公はきっと大変なことになるでしょう。
そして、これからも悩み、挫折しかけてしまうかも知れません。それをどうやって乗り越えて行くのか、とても興味があります。
続編を書いていただけることを期待したいと思います。

麦二郎

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