『東京奇譚集』村上春樹

麦二郎
麦二郎

No.1639 2021年9月20日読了

奇譚とは、珍しい話、不思議な物語という意味。
ありそうにない不思議な物語から、あるかも知れないと思えるくらいの不思議な話まで、幅はあると思います。でも、珍しさや不思議さがメインではなく、そのことと対峙する人の物語がメインです。

不思議なくらい偶然が重なることは、ありそうな不思議かも知れません。
「偶然の旅人」は、孤独なピアノ調律師が主人公。タイトルどおり、いくつかの偶然の話です。
「ハナレイ・ベイ」は、サーファーの息子を亡くした母親の人生の物語。
「どこであれそれが見つかりそうな場所で」は、マンションの高層階の階段で失踪してしまった夫を探す妻と夫捜しを手伝うボランティアの物語。
「日々移動する腎臓のかたちをした石」は、タイトルどおりの不思議な物語です。
最後の「品川猿」は、名前を盗んだ猿と盗まれた女性とその同級生の物語。

どの作品も短いけれど、先へ先へとページを捲りたくなります。
意外性のある結末を期待してではなく、物語で何が描かれているかを知りたいという気持ちです。
さすが村上春樹さん、読み応えのある物語ばかりです。

この本を読み終えて、積ん読本は残り8冊になりました。
今月はあと4,5冊読みたいところですが、積読本が無くなったら、まだ読んでいない村上春樹作品を読んでみたくなりました。

麦二郎

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