丸善丸の内本店は、東京駅のすぐ近く、丸の内オアゾというビルの1階から4階にある。
僕は神奈川県茅ヶ崎市に住んでいるのだけど、汐留の近くに会社があるから、出社した帰りは東京駅まで行って、特急湘南に乗って帰る。特急湘南は、30分毎に東京駅を出発するから、待ち時間が最大30分あることになる。
待ち時間が長めになった時は、その時間に応じて駅ナカの本屋さんだったり、酒屋さんに寄って時間をつぶす。
そんな時気が向くと、駅を出て丸善丸の内本店に行って、時間をつぶす。
丸善丸の内本店で僕がよく行くのは、4階にある文房具売り場と1階のビジネス書売り場。
1階には新書、文庫、単行本のベストセラーのコーナーがあり、各階を全部回るのではなく、1階のそのコーナーを覗いて行くのが、時間的にはちょうど良いからだ。
でもその日は、珍しく3階の文庫や新書のコーナーや2階の文学のコーナーを覗いた。ゆっくり見たかったので、電車は1本後に遅らせていた。30分以上文房具や本を見て歩ける。
そして、2階でこの本、岸本佐知子さんの『あれは何だったんだろう』に出会えたのだ。
ビールを飲みながら本を読みたかったから、特急湘南でその願望を満たすことにした。
でも実際に読んだ本は、『あれは何だったんだろう』ではなく、鈴木伸子さんの『おいしい東京ひとり散歩』という文庫本だった。
実はこの2日前にも「ビールを飲みながら、本を読みたい」という願望に取り憑かれていて、駅ナカの本屋さんで、この文庫本を買っていたのだった。何を読もうか迷った挙げ句に、『おいしい東京ひとり散歩』を選んでいた。ビール=おいしい、こういう発想って何と安易な発想だろうか。

ちょっと遠いから通勤以外で滅多に東京に行くことは無いのだけれど、食べ歩きには大いに興味があり、買ってみた。食べ歩きで見つけたおいしいもの、何だったら昼飲みなどが紹介されていたら、楽しく読めるだろうと期待した。
結果は「散歩」の方に軸足があり、おいしいものはどうおいしいのか、あまり言及されていなかった。お酒の登場シーンも少なかった。
驚いたのは、その街ゆかりの人物やその街の歴史が詳しく語られているところだった。ただ、僕の興味の核心は突いてなかった。
そもそもどうして「ビールを飲みながら、本を読みたい」と思ったのかと言うと、この本の影響だった。
千野栄一さんの『プラハの古本屋』だ。帯のコピーに「本とビールと友情と」とあるように、内容はほとんどが本の収集に関するもので、本の収集に協力している友人が登場し、そして本を読みながらビールを飲むシーンがある。
著者が集めている本は、プラハの古本屋に置いているような本で、なおかつ希少価値のある本。
本は読むけれど、古書の収集とか、ましてや外国の本については知識も興味も無くて、ちんぷんかんぷんだった。そんな中で印象に残ったのが、ビールを飲みながら本を読むというリラックスしたシーンだった。

とても単純にできている僕は、それに影響されて特急湘南でビールを飲みながら、本を読もうと思ったというわけだ。さて、どんな本を読もうかと考えていたところで、丸善丸の内本店の2階で『あれは何だったんだろう』に出会ったのだった。
ただ、電車の中では何だか落ち着かず、ゆったりとしてビールを飲み、本を読むことは難しいと結論を下した。
岸本佐知子さんのエッセイは、去年の1月に『なんらかの事情』を読んで、これは僕好みの面白いエッセイ集だとファンになっていた。『なんらかの事情』は、『ねにもつタイプ』シリーズの第2弾で、シリーズは全部読みたいと思っていたのだけど、実はそのことをすっかり忘れていた。
シリーズ第4弾の『あれは何だったんだろう』を見つけて、そのことを思い出したのだった。
昨日の夜、赤ワインを飲みながら、Amazonで『ねにもつタイプ』シリーズの本2冊をポチったことを打ち明けておこう。
