装丁がとても美しい本だと思いましたが、版元の「すみれ書房」はまさに「美しい実用書」を特徴とする出版社なのだそうです。
物語は、主人公の麻衣子さんが新幹線に乗る場面から始まります。夫からマンション購入資金の相談を受け、実家へ無心をしに行く道中、彼女は隣席になった経営コンサルタントの石丸さんから家計管理の講義を受けることになります。そのやり取りは非常にわかりやすく、読み手である私も一緒に講義を受けているような感覚になりました。
内容は会社経営に通じるものがあり、随所に引用されるドラッカーの言葉も興味深く響きます。特に、細かな家計簿をつけずに家計を管理していく手法には、目から鱗が落ちる思いでした。
ある程度、会社の管理会計に関わる仕事をしてきた私にとって、家計と会社経営の共通点には深く納得させられるものがありました。損益計算書(PL)的な発想だけでなく、家計管理にも「貸借対照表(BS)」が欠かせないという点は、ぜひ自分でも実践してみようと思います。
本書で紹介されている基本の四つの表——「昨年の収支実績」「1年間の予算と実績」「1か月の予算と実績」そして「生涯収支」。これらをさっそく作成してみたいという衝動に駆られています。
また、支出を「管理可能」と「管理不能」に分ける手法も実に興味深いものでした。まず手を付けるべきは、食費などの管理可能支出ではなく、固定費などの「管理不能支出」であるという指摘も、まさに発見でした。
私自身、間もなく訪れるセカンドライフに向け、家計を身軽に整えたいと考えていたところでしたので、今の私に「ジャストフィット」する一冊でした。
もちろん私のようなケースだけでなく、より若い世代の方が将来を見据えて手に取るにも、これ以上ない良書だと思います。
No.2022 2026年1月1日