『ラブカは静かに弓を持つ』安壇美緒
No.1858 2024年3月9日読了
2023年の本屋大賞で第2位になった本。
新刊の時に買いそびれていたので、図書館で予約待ちをしてやっと2週間前に順番が来た。
さっそく読み始めてみたものの、他の本を読んでいたこともあり、最初はスロースタート。
ここ数日でやっと読み終えた。
少年時代にチェロ教室に通っていて、事件に巻き込まれ怖い思いをし、不眠を抱える主人公の橘は、音楽著作権を管理する団体の社員。
音楽教室を営む会社との裁判を控えており、橘はスパイとして音楽教室にもぐり込む。
チェロ講師に教わり、その教え子達とも知り合って行く中で、橘はスパイの身に後ろめたさを感じ始める。
再びチェロの演奏をする中で、過去の傷も癒えようとしている時に、裁判が近づき知り合った人たちと別れを告げなくてはいけなくなるが…
物語の展開は、非常にゆっくりしたペースだ。
主人公が自ら何らかの行動を取るのではなく、流れるままという気がする。
それはそれで有りなんだけど、そのせいかなかなか読み進められなかった。
1週間くらいかけてちょっとずつだったが、約半分残して図書館への返却期日になってしまった。
ぎりぎりで読み終えた。
後味は良い小説だった。
音楽を題材とした小説と言えば、恩田陸の『蜂蜜と遠雷』を思い出すが、それとは全然毛色が違う。
スパイ小説、ミステリー小説の類かと言うと全然そんなこともない。
人との接触を避けてきた青年が人の温かみを感じるようになっていく物語でもある。
もちろん音楽の素晴らしさも描かれている。
全体的にとても面白い小説だった。
ワクワクするような面白さではなく、音に例えるととても静かな小説だった。