『お帰り キネマの神様』原田マハ

No.1851 2024年2月21日読了

2011年に出版された『キネマの神様』は、山田洋次監督により映画化され、2021年に公開された。
映画は原作を大幅に書き換えていたようだが、その映画を元にノベライズされたのがこの『お帰り キネマの神様』だ。
今回読んだのは文庫本だけど、『キネマの神様 ディレクターズカット』という単行本が2021年に出版されている。この単行本の文庫化なんだと思う。

時は令和元年秋、円山郷直とその家族の暮らしから入る。
郷直ことゴウは、酒と博打で年金もシルバー人材センターを通じた僅かな収入も使い果たす生活。
娘は孫と一緒に出戻って、妻も含めて家族4人で暮らしている。

時を遡り、昭和44年大船の撮影所。
ゴウは助監督として働いており、妻との出会いや監督としてデビューしようとする頃までが描かれる。
その時があっての今なのである。

時は再び令和元年に戻り、家族とって大きな出来事が起こる。
映写技師として働いていたゴウの親友テラシンなど、映画とともに生きた人たちが描かれている。
家族の温かい心や人情が描かれていて、とても良い気分になる小説だ。
ネタバレになるので、詳しくは実際に読んでいただきたい。

本当に、読み終えて温かい気持ちになった。
特にラストが良かった。
何だかほんわかするような、温かい空気に包まれたような余韻が残った。
ゴウの人生は決して良いものではなかったかも知れないけれど、全てが報われるようなラストだった。

久々に原田マハ作品を読んで、また他の作品も読みたくなった。
すっかり忘れてしまった『キネマの神様』も近いうちに再読してみたい。

麦二郎

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