『私たちの世代は』瀬尾まいこ

No.1817 2023年11月25日読了

瀬尾まいこさんの本を初めて読んだのは、2008年11月のことでした。今から15年前ということになります。
読んだのは、『天国はまだ遠く』でした。文庫本になってました。
はっきりと覚えていないのですが、多分映画を観たのがきっかけだったと思います。
それから、いろんな本を読み、最近では新刊が出るとすぐに読むことにしている作家さんの一人です。

コロナ禍の頃に小学三年生の二人の少女が主人公です。
二人の物語と未来の話が交錯しながら始まり、良くある手法だとは思いますが、二人の物語がある時点から一つになります。
瀬尾まいこさんの物語には特別な伏線やその回収というミステリータッチのものはありませんので、物語は淡々と進んで行き、当然のように交わり、そして明日へ向かうのです。

主人公の一人は冴(さえ)。母子家庭で、母親は夜の仕事をしています。
とても明るい母親で、素晴らしい母親なのですが、冴は中学校で母親が夜の仕事をしていることでいじめに遭います。
でもそんなに深刻で無かったと思えるのは、母親の人柄や冴を支えてくれた蒼葉という男友達の存在が大きかったのだろうと思います。
冴の強さや考え方には、思わず同感してしまうところがありました。
とても素敵な女性に育って行きます。

もう一人の主人公は、心晴(こはる)という少女です。
あることがきっかけで、休校明けとなっても不登校になってしまいます。
学校の半分ずつ登校する変則的な時期に、同じ机に座っているだろう知らない友達とメモの交換を始めます。
その友達がちょっとしたキーパーソンです。
もう一人、SNSで知り合ったカナカナという同じく不登校の友達とのメッセージ交換も、物語が進んで行く中で変わって行きます。

そしてこの二人の物語は交わるのですが、それがとても良い感じです。
交わることに意外性はありませんし、その偶然を必要以上に奇跡的なことだと表現しないのが瀬尾まいこさんの描く物語です。
いろいろな出来事があったり、いろいろ辛いこともあるのですが、最後は明日に向かって力強く歩んでいる主人公たちが居ます。
それが瀬尾まいこさんが描く物語の特徴なのだと思います。
この作品も、後味がとても良い小説でした。

麦二郎

コメントを残す