『夜に星を放つ』窪美澄

麦二郎
麦二郎
2023年5月8日

No.1769 2023年5月2日読了

窪美澄さんの本は、この本で8作目になる。
初めて読んだのは、話題にもなった『ふがいない僕は空を見た』で、その後は出版された順番ではなく、ランダムに読んだ記憶がある。
結構重いテーマを扱った作品が多く、全体的なイメージとしては、あまり明るい作品に出会えていないイメージだ。
その窪美澄さんが直木賞を受賞された作品と言うことで、期待しつつ新刊を買うこともなく、結局買いそびれてしまった感じで、図書館で予約を入れていた。
出てすぐに、または直木賞受賞後すぐに買わなかった理由は、特に思い付かない。タイミングを逃してしまった感じで、それなら気長に図書館の順番待ちをするか、ということになった。

内容

長編か中編かなと思っていたら、短編集だった。
5つの短編で構成される本で、『オール讀物』の2015年から2021年にかけて発表されている短編。
少しだけネタバレな内容になると思うけど、5つの話は以下のとおり。

「真夜中のアボカド」は、双子の妹を亡くした姉が主人公。
コロナ禍で、婚活アプリで出会った人とつきあう話。

「銀紙色のアンタレス」は、夏に海に近いおばあちゃんの家に行き、海で思い切り泳ぐ高校生の男の子が主人公。
おじいちゃんは、主人公が小学校に入った年に亡くなっている。
海辺で出会った子連れの女性に恋心を持つ。

「真珠星スピカ」は、二か月前に交通事故で母を亡くした中学生の女の子が主人公。
父親には見えないが、主人公には亡くなった母の幽霊が見える。
学校ではいじめられていて、保健室へ通う毎日。

「湿りの海」は、37歳の男性が主人公。
妻は浮気をして幼い娘を連れて、アリゾナで新しい生活を始めている。
ある日隣に引っ越してきたシングルマザーと幼い女の子と出会う。

「星の随に」は、両親が離婚し父親と一緒に暮らしている小学生の男の子が主人公。
父親の再婚相手とその息子と一緒に生活をしている。
時々別れた母親に会っている。

5つの作品が全て「星」がモチーフになっている。
そして、それぞれの主人公だったり、登場人物だったり、何かを喪失したことがベースになっている。
その喪失感とどうやって折り合いをつけるか、或いは穴埋めをするか、そんな話だ。

これから…

今回の窪美澄さんの作品は、明るいものが多い。
軽いわけではないが、これまで読んだ重い話より、何だかカラッとしているし、進む道の先には光が見えているような物語ばかり。
この作品が一番好きかも知れない。

きっと、この短編集のような作品を期待しつつ、他の窪美澄さんの作品を読むのだろう。
そう思っていたら、何だか新作が出版されたみたいだ。
『夜空に浮かぶ欠けた月たち』、これはきっと新刊を買って読むことになりそうだ。
今月は今ある積読本を0にすることにしている。
きっと、今月末に大人買いする本の中の一つになると思う。

麦二郎

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