『アイビー・ハウス』原田ひ香

麦二郎
麦二郎

No.1761 2023年4月1日読了

初出は、2012年の『群像』。2013年に出版されているので、10年以上前の作品と言うことになる。
今回読んだのは、講談社文庫。文庫本ではたまに見かけるが、カバーの上に新しいカバーが掛かっている。
新しいカバーは、この物語に登場するふた組の夫婦、4人の人物の関係がイラストで描かれていて、物語の内容を示している。

内容

3階建ての一軒家には、蔦が絡まっていて、そこで暮らす4人の間では「アイビー・ハウス」と呼ばれている。
1階は共同のスペース。2階が派遣プログラマーの一樹35歳と喫茶店アルバイトの未世子32歳の夫婦が暮らす場所。
3階には、会社員の隆35歳とフリーライターの薫37歳が暮らす。
一樹と隆が大学時代の友人で、住居費を抑えるための究極の節約術として、この一軒家で共同生活を始めることにした。
薫と未世子は、かつての職場の先輩と後輩の間柄。
シェアハウスとふた組の夫婦の関係性が、このように新しい表紙に描かれている。

極力少ない生活費で暮らし、働くことを減らして、自分達の時間を作るという考え方なのは、一樹。
過去に激務で身体を壊した経験から、そんな考え方になった。
当初はそのような考えは、ふた組の夫婦共通のものとされていた。

人の考えも、夫婦の関係性も、時間が経てば変わるもの。
この世の中に変わらないものなんて無い。
変わろうとするものをあえて変わらないようにしようと抑えてしまうと、どこか息苦しさを感じてくるもの。
変わらないために一軒家を共同購入したのであって、簡単に引っ越せない。
変わっちゃいけないと思い始めると、窮屈になる。

そんなふた組の夫婦のある期間の物語だが、著者はそこら辺を上手く描いていると思う。

これから…

原田ひ香さんにはまっている。
次に読むのは、『サンドの女 三人屋』。2021年に出版されているので、比較的新しい。
でも、最新刊を全然読んでいないことに気付いた。
『母親からの小包はなぜこんなにダサいのか』と『古本食堂』の2冊。
今たまっている積読本を片づけた頃に、この2冊は読むことにしよう。
さっそく図書館で予約しよう。

麦二郎

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