『無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記』山本文緒

麦二郎
麦二郎

No.1737 2023年1月21日読了

本屋さんに並んでいるのを見かけて、きっとこの本は読むだろうと思っていました。
去年の秋に発売されているので、きっとその頃のことです。
そして、買ったのは12月1日、Amazonで注文しました。届いたのが、12月6日のことでした。

それから1か月半くらい積読本でした。
読みたいけれど、読む勇気が出なかったことが、理由の一つかも知れません。
読み始めたら、きっと一気に読んでしまうに違いないと思っていました。
そのとおりでした。

土曜日は、朝から北鎌倉にある円覚寺に行こうと思っていました。
特に理由はないのですが、「今日読もう」と思いました。
僕が大好きなお寺、円覚寺を歩く日なのだから、今日読むのが一番だと思いました。
出発前に自宅で読み始め、移動時間にも読みました。
円覚寺を出て、喫茶店でひと休みしていた時も、読んでました。
そして、奥さんと待ちあわせたショッピングモールへ移動する時も読みました。
読み終えたのは、ランチを終えて、帰宅した後でした。

山本文緒さんが、膵臓がんと診断され、抗がん剤で進行を遅らせるしか手立てがないと宣告されたのは、2021年4月のことだったと、この本に書いていました。
一時は抗がん剤治療を受けるのですが、抗がん剤治療は地獄のようで、緩和ケアへ進むと決めてからの日記が、この本の始まりです。同年5月24日に始まります。

4つの章から構成されていて、読み進めると病気の段階毎に章立てがされているように感じました。
体調が悪くなったり、ちょっと落ち着いたり、それを繰り返していたことがわかります。
治療方法も少しずつ変わって行きます。
薬で痛みなどを緩和しているのでしょうが、非常に辛い状態だったことがわかります。
そんな中で、この日記を書き続けて行く、本にするためにテキストに落として行くことが、どんなに大変だったか想像できそうです。

書くことが山本文緒さんの生きることだったのかも知れません。
病気と闘うことが、書くことだったのかも知れません。
そう感じました。

遅かれ早かれ誰にでも訪れる人生の「終わり」ですが、やはり早過ぎた気がします。
割り切れない思いだったことが、この本からも伝わってきます。
でも、このような本を残されるということは、凄いことだと思います。
必ず訪れる「終わり」を、いつもは意識しないで生きている僕ですが、この本を読んで「生きること」と「人生の終わり」を考えながら、一気に読んでしまいました。
何をとは言えないのですが、山本文緒さんに教わった気がしています。
こんな素敵な本を読ませていただいて、ありがとうございました。

麦二郎

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