『東京ロンダリング』原田ひ香

麦二郎
麦二郎

No.1695 2022年6月12日読了

「ロンダリング」は賃貸の事故物件に住んで前の住人の居住履歴を浄化する仕事のこと。
賃貸物件は前の住人のことを次の住人に伝える義務があるようで、事故が起きた物件に入居してしばらく生活をすることによって、一つ前の住人の事故履歴を隠すことができるということなのです。
一定期間家賃ゼロ円で入居でき、そこで生活をしているだけで収入が得られるという仕事です。

主人公は32歳でバツイチ、家も無いりさ子という女性です。
いきなり夜中に戸を叩く音がして目を覚ます主人公と訪れた女性の話から展開が始まるので、これはスリリングな出来事や、もしかすると幽霊なども出てくるホラー小説か、と思いきやそのようなことは起こらず、割と平穏だったかも知れません。
最後のロンダリングでちょっと気味の悪い状態があったものの、想像していた展開とは違っていました。

主人公は変わった離婚の仕方をして、実家に帰ることもできず、帰る場所をなくしてしまっているという変わった境遇に居ます。
そしてロンダリングと言う変わった仕事で生活をしているのです。
原田ひ香さんの設定は、ちょっとどこか変わっていると思うのですが、この物語はそんな主人公が自分を取り戻して行く再生の過程を描いているようです。
そういうところが、原田ひ香さんの小説の魅力なのかも知れません。

原田ひ香作品を次々と読んでみたくなりました。
実はこの前買った本の中に、もう1冊あるのです。『古本食堂』という本です。
これはさっそく今日から読み始めることにしました。
他にも文庫本化されていて、まだ読んでない作品がいくつもありますので、今の積読本を減らした後で、いろいろ読んでみたいと思います。

麦二郎

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