『三千円の使いかた』原田ひ香

麦二郎
麦二郎

No.1653 2021年11月25日読了

以前から本屋さんや読書メーターで目にしていた本で、一番読んでみたいものだと思っていた本を今日読了しました。
第1話から第6話までの6つの短編で構成されています。

物語は祖母、母、娘二人と父という家族を中心に展開して行きます。それぞれの家族視点で物語が進んで行くのです。
第1話は、IT関連会社に勤める末っ子が中心の物語です。タイトルになっている「三千円の使いかた」というタイトルです。
「ひとは三千円の使いかたで人生が決まるよ」という祖母の言葉から始まります。
象徴となっているのは、ティーポットです。ただ単に安い物を使うか、それともずっと使える高級な物を使うかという選択肢の話です。

第2話は、祖母中心の「七十三歳のハローワーク」です。老後のちょっと身につまされる話ですが、このおばあちゃんがとてもユニークで、可愛らしくて、会ってみたいくらいの存在感です。
全体を通して、このおばあちゃんは重要な役割を果たしています。

第3話は、安月給の同級生と結婚して、倹約しながら貯金を増やしている長女中心の話です。
この辺りまでは、お金中心の物語と思える内容です。
現実にも良くある話だと思います。

第4話は、主人公は娘でも母でも父親でもありません。
お金に頓着の無い祖母の知り合いが中心です。この物語は他とは全く違う感じがするのが、原田ひ香さんの上手なところかも知れません。結局、お金かそれとも人なのか、そんなテーマです。

第5話は、母親が主人公です。熟年離婚を考えるものの、我が家の貯金は底をついていたりしていて、あれこれ悩んでしまいます。ぐるぐる回って結局結論は先送りのような話ですが、「あるある」なんでしょう。

そして第6話は、とてもほっこりする物語です。第5話の結論にも結びついています。
この第6話があるからこそ、この本はまとまった印象を受けるのだと思います。
何てことはなく、でもやっぱり大変な金銭問題、と言ったところでしょうか。
この第6話が締めくくりとして非常に良い感じです。終わり良ければ…と言うのが実感できそうな物語でした。

総じて、とても面白い本でした。
長編小説も良いですが、この本のようなとても身近に位置する「あるある」の物語も良いものです。
その割に読むのに時間がかかりましたが。

麦二郎

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