『漁港の肉子ちゃん』西加奈子

投稿者: | 2014年6月19日

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カバーのイラストが印象的な文庫本だと思ったら、イラストも西加奈子さん作でした。

本を買う場合、好きな作家の本だからという場合と、初めて読むのだけど何故かとても気になって買っている場合があります。後者の場合は、本の装丁そのものに惹かれる場合、タイトルから想像した内容に惹かれる場合、売れているからという場合など、いろいろあります。この本の場合は、やはりインパクトのあるタイトルに惹かれたのだと思います。買ったのは奥さんですが、僕の場合はそういう買い方をするかなと思う本です。

漁港の肉子ちゃん』何だかとても変わったタイトルです。しかも名前が「肉子ちゃん」なのです。肉なのに「漁港」だったりするバランス感覚にも驚きます。この物語に登場するお店は、実際にあったお店のようです。しかも偶然そのお店には、この物語の主人公「肉子ちゃん」とそっくりの方が居たようです。著者が編集者と旅をして生まれた小説というのも、ちょっとびっくりすることでした。その旅で見たお店がモデルなのです。場所は東北の石巻市で、残念なことにこの店は震災の津波で流されてしまい、「肉子ちゃん」そっくりの方は、亡くなられたそうです。

不幸な境遇に置かれて、何度も不幸な目に遭っている「肉子ちゃん」は、脳天気なわけじゃないでしょうが、自分では幸せだと思っているんじゃないかと思える人物です。豪快な人で、涙もろい人で、人情あふれる人だったりするのですが、そういう人は必ずどこかに居るのだろうなと思えるほど、身近に感じてしまいます。読み進めるに従って、「肉子ちゃん」に親しみを持って接している自分に気付きます。

語り手を務める「肉子ちゃん」の娘の「喜久子ちゃん」(キクりん)のキャラクターも、独特です。この人も、不幸を物ともしないところがありますが、「肉子ちゃん」とはタイプが違っています。「肉子ちゃん」は不幸にぶつかって行くタイプで、「喜久子ちゃん」は不幸を交わして行くタイプかも知れません。それぐらい違っているのですが、その違いがまた面白いのです。慌てる人とそれを脇から見ている冷静な人、そんな感じでうまく絡み合っているのです。

最初は物語のテンポが遅く感じて、退屈な小説なのかなと思ったのですが、読み進めるに従って、ページを捲るスピードはアップしました。いつの間にか、語り手の話に集中していて、いつの間にか「肉子ちゃん」と「喜久子ちゃん」が好きになっていました。とても面白い小説だったと思います。
(54冊目/2014年)


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