原田ひ香

『喫茶おじさん』原田ひ香

No.1821 2023年12月23日読了 主人公は、バツイチで無職、57歳のおじさん。大手ゼネコンを早期退職して、退職金で喫茶店を開業するも、早々に潰してしまい、二番目の妻とは別居状態。何ともふがいない設定の主人公だが、何となく脳天気感が漂っていたりする。もちろん、自分の人生をそれなりに考えているようだ。その場所は純喫茶。 そんな主人公の1年間の物語で、一月から十二月までの短編形式の物語とエピローグで構成されている。最初はどうだろうという感じだったが、終盤に向かって徐々に面白さが増してくる感じ。会社の同僚だった友人とか、前妻、別居中の妻と娘、開業する前に専門学校で知り合った女性、開業中に雇っ[…]
麦二郎
3ヶ月前

『母親からの小包はなぜこんなにダサいのか』原田ひ香

No.1813 2023年11月4日読了 原田ひ香作品、連続読みです。『老人ホテル』もこの本も、図書館で借りたものなので、返却のため優先して読んだのでした。直近の新刊は、出たら買って読もうと思っているのですが、新刊の時に読み損ねた本は図書館で借りて読むことにしました。 6つの話が収録されている短編小説集でした。母親からの小包がモチーフになっています。一つだけそうでないのも混ざっていますが。ありそうな話と、ありそうなエピソードばかりだと思いますが、そういう話が原田ひ香作品の面白いところなのかも知れません。想像を絶するあり得ない話ではなく、身近だということ。そして、それが現実だと嫌だなと思う気持ち[…]
麦二郎
4ヶ月前

『老人ホテル』原田ひ香

No.1811 2023年10月30日読了 このところ、原田ひ香率が非常に高くなっている。それにしても多作な作家さんだ。もう新刊が出てしまった。 この本は、2022年10月30日出版の本。と言うことは、ちょうど1年前だったりする。買いそびれた新刊だった本を、最近は図書館で借りて読んでいる。この本は、ずいぶん長い待ち行列だったということになる。 原田ひ香さんの小説には、嫌な人が結構出てくる。良く読む作家さんで比べてみると、瀬尾まいこさんの小説には嫌な人はほとんど出て来ない。対極と言っても良いくらい。 主人公は、天使というキラキラネームの女性。家庭に恵まれず、高校は中退していて、キャバクラに勤める[…]
麦二郎
5ヶ月前

『財布は踊る』原田ひ香

No.1809 2023年10月13日読了 母子家庭で育った葉月みづほは、お金に恵まれていなかったことから、高校時代に流行った長財布を手にすることが無かった。結婚して夫と子どもの3人家族であるが、今は夫の稼ぎだけで暮らしているので、生活はギリギリというところだろうか。みづほはそれでも節約をして、買いたいものも我慢してハワイ旅行に行けるだけの貯金をする。そして念願かなってハワイ旅行に出掛け、憧れのルイ・ヴィトンの財布を手に入れた。その大切な財布は、残念ながら長くみづほの側に置いておけなかった。 物語はこういうところから始まり、いろいろな人とお金の物語が展開して行く。ネタバレになるので、詳細は書か[…]
麦二郎
5ヶ月前

『口福のレシピ』原田ひ香

No.1803 2023年9月20日読了 主人公は、老舗の料理学校の後継者として期待される留季子。そういう家庭環境に反発を覚え、家を出て友人の風花と暮らしている。留季子と料理学校を仕切る祖母、母とのからみや、留季子の婿候補として雇われている料理学校の理事長とのからみで、一つの物語が進んで行く。時折美味しそうな料理の記述があって、この作品も料理小説かなと思う。 一方で昭和の世の料理学校を営む曾祖父の時代が描かれている。その物語の主人公は、しずえ。料理学校を営む家に女中奉公に来ている女性。しずえは、曾祖父の指導のもと、生姜焼きのレシピを書く。 二つの物語が並行して進んで行く。時代は令和と昭和という[…]
麦二郎
6ヶ月前

『ラジオ・ガガガ』原田ひ香

No.1797 2023年8月13日読了 『ラジオ・ガガガ』というタイトルは、素晴らしいと思う。まさにラジオはガガガっていうイメージがするからだ。僕がラジオを聴いていたのは、高校生くらいの頃だったろうか。もちろん、オールナイトニッポンという番組も聴いたことはあるが、それほど熱心なファンではなかった。 僕が一時期のめり込んでいたのは、海外の短波放送を聴くという趣味だった。雑音がひどい中、ダイヤルを回して音がするところで耳を澄ます。どこの国の放送かを確認して、視聴したことを郵送で報告する。BCL(Broadcasting Listener)ブームは、1970年代だったみたいで、僕も海外の放送局から[…]
麦二郎
7ヶ月前

『図書館のお夜食』原田ひ香

No.1790 2023年7月12日読了 本と食をモチーフとした物語。この図書館は私設図書館で、有料で、しかも夜しか開館していない。多くの人に来てほしくない図書館なのだ。タイトルに「夜食」とあるように、この図書館で従業員向けに提供される食事も面白い。名のある作家の本に登場するお料理なのである。 夜しかやっていない図書館なんて、ミステリアスに決まっている。しかも従業員も何だか謎めいている。秘密を抱えている。 何とこの本のカバーの裏側には、この本に登場した料理のレシピが印刷されていました。でも、個人的にはお料理よりもこの図書館の経営者が気になっていました。 新しくこの図書館の従業員となった樋口乙葉[…]
麦二郎
8ヶ月前

『DRY』原田ひ香

No.1778 2023年5月26日読了 原田ひ香さんの本は、これで15冊目になります。目をつけている文庫本が2冊、図書館で予約している単行本が3冊ありますから、20冊突破は近いかも知れません。最初に読んだのは、2018年2月のことで、『ランチ酒』でした。因みにこれまで沢山読んだ作家ベスト10には、まだ入っていませんが、20冊を超えるとランクインでしょう。 内容について いやいや、酷い話でした。そして、気持ちが悪い。原田ひ香さんの小説でここまで重かったのは、他には無かった気がします。主人公は浮気で離婚されて、子ども達と引き離され、金銭的にも困窮している藍という女性です。祖母と母が暮らす実家に戻[…]
麦二郎
10ヶ月前

『サンドの女 三人屋』原田ひ香

No.1762 2023年4月5日読了 今月2冊目の読了本。連続して原田ひ香作品でした。シリーズ最初の『三人屋』では、三女の朝日が喫茶店、次女のまひるが讃岐うどん屋、長女の夜月がスナックを営んでいた。朝昼夜交代で、父親から譲り受けた店で。「シリーズ」と書いてしまったが、次回があるのかどうかは不明だったりする。この『サンドの女 三人屋』は、2021年2月に出版されていて、割と新しい。続編は今年かも知れないし、ずっと先かも知れないし、これで終わりかも知れない。 この本の中身 お店の経営形態は、ちょっと変わっていた。三女の朝日が就職したため、次女が朝から昼にかけてサンドイッチを販売しているという形態[…]
麦二郎
11ヶ月前

『アイビー・ハウス』原田ひ香

No.1761 2023年4月1日読了 初出は、2012年の『群像』。2013年に出版されているので、10年以上前の作品と言うことになる。今回読んだのは、講談社文庫。文庫本ではたまに見かけるが、カバーの上に新しいカバーが掛かっている。新しいカバーは、この物語に登場するふた組の夫婦、4人の人物の関係がイラストで描かれていて、物語の内容を示している。 内容 3階建ての一軒家には、蔦が絡まっていて、そこで暮らす4人の間では「アイビー・ハウス」と呼ばれている。1階は共同のスペース。2階が派遣プログラマーの一樹35歳と喫茶店アルバイトの未世子32歳の夫婦が暮らす場所。3階には、会社員の隆35歳とフリーラ[…]
麦二郎
12ヶ月前

『ギリギリ』原田ひ香

No.1757 2023年3月19日読了 3日前に読み終えた本のことを、まだ書いていなかったことに気付いたので、書いておくことにします。このところ結構沢山読んでいる原田ひ香さんの作品です。この本は文庫本ですが、2018年11月に出版されているので、結構古い作品です。単行本としては、2015年なので8年前の作品ということになります。 この本の内容 夫を亡くした瞳さんと、再婚相手の同級生の健児さん、そして亡くした夫の母の静江さん、この3人の視点で描かれている物語です。ちょっと微妙な関係です。再婚相手の健児さんと、前夫の母親の静江さんが結構仲が良かったりするのですから。 かと言って、ほんわかとした温[…]
麦二郎
去年

『一橋桐子(76)の犯罪日記』原田ひ香

No.1755 2023年3月14日読了 読書の楽しみは、「面白かった」「良かった」「感動した」などと思える本と出会うことができるところでしょうか。重厚長大なテーマだけが感動的なわけではなく、ユーモラスな作品だけが面白いと思うわけでなく、感じることはそれぞれ複雑なのですが、いずれにしても「読んで良かった」と思える本に出会えることは、とても嬉しいことです。 この本は、久々のヒットです。読者としての立場から見たヒット作なのです。このところ原田ひ香作品で文庫本になった本を買い漁っている感じですが、ますますいろいろ読んでみたくなる本でした。 この本の内容 主人公は76歳ですから、そこそこの高齢者。血の[…]
麦二郎
去年

『ランチ酒 今日もまんぷく』原田ひ香

No.1752 2023年3月1日読了 仕事が忙しかったせいか、ずっとブログを更新できませんでした。書いた日と読んだ日が、あまりにもかけ離れてしまうので、投稿日付を調整しておくことにします。 原田ひ香さんの小説をいくつか読んできましたが、今や気になる作家さんの一人です。過去1年間に読んだ本の著者のナンバー1です。読書メーターに登録している本の全期間で言うと、まだまだですが、7冊も読んでいます。今年はもっと読むだろう作家さんです。 この本の内容 ストーリーには触れませんが、短編でありながら、お話は繋がっています。なので、「ランチ酒シリーズ」の2作目を読んで、すぐにこの3作目を読みたくなったのです[…]
麦二郎
去年

『ランチ酒 おかわり日和』原田ひ香

No.1751 2023年2月25日読了 グルメドラマと言えば、「孤独のグルメ」というイメージで、要するに美味しいお店で美味しいものを食べるだけ、そんな先入観があるかも知れません。この小説は、おいしいランチとお酒だけの小説ではありません。このシリーズの始まりの『ランチ酒』は残念ながらストーリーを忘れてしまいましたが、この本を読んで、一連のストーリーがある長編小説だと感じました。 この本の内容 ネタバレになるので、小説のストーリーについては詳しく書かないことにします。主人公の犬森祥子は、「見守り屋」という変わった職業です。そう言う意味では、原田ひ香さんの「職業小説」のジャンルにも入りそうです。「[…]
麦二郎
去年

『人生オークション』原田ひ香

No.1740 2023年1月27日読了 原田ひ香さんのお仕事小説でした。ちょっと変わったお仕事が特徴かも知れません。短編小説が二つ収録されています。 最初は本のタイトルになっている「人生オークション」です。主人公の叔母さんが離婚して一人になり、オークションで生計を立てるという話で、主人公がそれを助けるのです。「人生」が付いているのは、山のような荷物をオークションで減らして行く、ミニマリストではないのですが、減らした分だけまさに人生が軽くなって行く話なのです。お仕事と言って良いかどうかは、迷うところです。 もう一つの話「あめよび」は、ラジオ番組のハガキ職人と付き合っている主人公の話です。主人公[…]
麦二郎
去年

『ミチルさん、今日も上機嫌』原田ひ香

No.1711 2022年9月28日読了 解説に「ちょっと変わったお仕事シリーズ」と書いてあって、なるほどと思いました。前に読んだ『東京ロンダリング』は、事故付き物件に住む仕事でした。この物語は、家賃値下げ交渉屋さんです。それは、それとして、この物語はとても面白かったです。そして、何だか明るくなる物語でした。 45歳、職なし、バツイチ、彼氏なしの主人公のミチルさんには、バブル期の過去の栄光があったのです。それが、今はそういう状況であり、諦め切れないのです。確かにバブル期には、就職は売り手市場だったし、ミチルさんほどの美貌なら、アッシー君だって、美味しいごはんを奢ってくれる男性だって居たのです。[…]
麦二郎
去年

『古本食堂』原田ひ香

No.1697 2022年7月1日読了 一つ前に読んだ本の読了日を見ると、この本を読むのに2週間くらいかかったことになります。とても読み易い本なので、早ければ3日くらいでは読めそうなのですが、この2週間を振り返ると、そう言えば仕事が忙しかったなと思いました。時間が足りないわけではなく、心に余裕が無い時には読書が進まなくなる人なんです。 自分のことについて、もう少し書きますが、自分はとてもせっかちな正確だと思っています。だから、この物語を読んでいると、焦れったくなってしまいます。ゆったりとしたテンポで進んで行くからです。でも、人生はそうなんだろうと思いますし、一歩ずつ、少しずつという丁寧な生き方[…]
麦二郎
去年

『東京ロンダリング』原田ひ香

No.1695 2022年6月12日読了 「ロンダリング」は賃貸の事故物件に住んで前の住人の居住履歴を浄化する仕事のこと。賃貸物件は前の住人のことを次の住人に伝える義務があるようで、事故が起きた物件に入居してしばらく生活をすることによって、一つ前の住人の事故履歴を隠すことができるということなのです。一定期間家賃ゼロ円で入居でき、そこで生活をしているだけで収入が得られるという仕事です。 主人公は32歳でバツイチ、家も無いりさ子という女性です。いきなり夜中に戸を叩く音がして目を覚ます主人公と訪れた女性の話から展開が始まるので、これはスリリングな出来事や、もしかすると幽霊なども出てくるホラー小説か、[…]
麦二郎
去年

『そのマンション、終の住処でいいですか?』原田ひ香

No.1687 2022年5月1日読了 好きな本を好きな時に、好きなだけ読むことにしょうと考え、読書量だけを目標にしないようにしたら、全然読めなくなってしまいました。仕事が忙しかったこともありますが、今日は何ページは読んでおこう、みたいな目安も無しにしてしまったので、ほんのちょっとずつしか読めなかったのです。でも、しばらくは好きな本を好きな時に、好きなだけ読むことにします。 さて、かなり日数がかかった本でしたが、決して面白く無いからではありません。そのタイトルやこれまで読んだ原田ひ香さんの小説から想像していたのとは、ちょっと違った感じの物語でした。読み終えてみると、やはりどこかに原田ひ香さんな[…]
麦二郎
去年

『三千円の使いかた』原田ひ香

No.1653 2021年11月25日読了 以前から本屋さんや読書メーターで目にしていた本で、一番読んでみたいものだと思っていた本を今日読了しました。第1話から第6話までの6つの短編で構成されています。 物語は祖母、母、娘二人と父という家族を中心に展開して行きます。それぞれの家族視点で物語が進んで行くのです。第1話は、IT関連会社に勤める末っ子が中心の物語です。タイトルになっている「三千円の使いかた」というタイトルです。「ひとは三千円の使いかたで人生が決まるよ」という祖母の言葉から始まります。象徴となっているのは、ティーポットです。ただ単に安い物を使うか、それともずっと使える高級な物を使うかと[…]
麦二郎
2年前