『拳の先』角田光代

拳の先』の前作『空の拳』を読んだのがいつ頃だったかなと思って、調べてみたら、2014年3月頃でした。3年近く前のことだったから、前作の内容はすっかり忘れてしまってます。でも、この『拳の先』が、『空の拳』の続編だということは、読んでいたらすぎにわかりました。

出版社に勤め文芸編集者として働く那波田空也は、再びボクシングとの距離を縮め、ジムに通います。ジムに通うと言っても、ある時期はボクシングの練習をしていたのですが、今回はジムで練習を積むタイガー立花と言うボクサーを見に行くために通っています。前作もそうでしたが、この小説は那波田空也の視点で書かれています。端的に言うと、空也の視点で綴られたタイガー立花の物語と言って良いと思います。タイガー立花が試合に勝ったり、負けたりしつつ最後は世界戦へ進む過程を追いかけています。

登場人物もいろいろ居て、作家の久須田蒼介は一時期タイガー立花のファンになり、タイガー立花を追いかける読み物を書こうとしますが、ある試合のタイガー立花の敗北で、天才的なボクサー岸本修斗に鞍替えしてしまいます。

ジムに練習に通う小学生のノンちゃんは、いじめに遭っている子供で、それを親に隠しています。強くなりたいと思って、ジムに通っています。空也はノンちゃんの様子が気になり、いろいろな場面でアドバイスをしたり、心配したりしています。このノンちゃんのいじめの話が、タイガー立花の物語と並行して進んで行く点で、結構重要な位置を占めるのではないかと思います。

物語は空也の目を通して、タイガー立花のボクサー人生を追いかけて行きます。天才的で才能に恵まれたボクサーも居れば、素人でたまたまジムに入って認められ、プロになって無名のまま消えて行くボクサーも居ます。後半ではタイガー立花の孤独な戦いがクローズアップされて、とても読み応えがありました。拳の先にあるものは何か、この小説のテーマはそういうことだと思います。

ボクシングという角田光代作品では珍しい題材だけど、前作に引き続き、角田光代さんだから書けるボクシング小説だという気がしました。500ページを越える長編で、昨年から少しずつ読み続けてきましたが、じっくり読んで良かったと思える作品だと思います。
(1冊目/2017年)


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