『終わった人』内舘牧子

投稿者: | 2016年7月10日

『終わった人』内舘牧子

終わった人』何と寂しい響きだろうか。そう、この小説は、定年退職後の男性を主人公とした物語なのである。

大手銀行を定年退職した主人公は、役員への道を歩んでいたものの途中で子会社へ出向させられ、エリートコースを外れてしまう。それでも、会社に見切りを付けずに定年になるまで働いて来た。主人公は、言うまでもなく、仕事人間である。そんな人が、終わってしまった後に残るものは、何も無い。持て余すほどの時間だけが残っている。

この小説、それからの退屈な日々を延々と描き続けるのかと思いながら読んだが、意外な展開がある。主人公は、まだ終わってはいなかったのだ。終わったかに見えた後が、波瀾万丈だったりする。

著者の内舘牧子さんは、最後にこう書いている。「着地点に至るまでの人生は、学歴や資質や数々の運などにも影響され、格差や損得があるだろう。だが、社会的に「終わった人」になると、同じである。横一列だ。本書の主人公のように着地点に至るまでの人生が恵まれていれば、かえって「横一列」を受け入れられない不幸もある。」

終わりかけている僕にとって、この小説は、いろいろと考えさせられた。納得できる部分も沢山あり、自分の場合はどうだろうと考え込むところもあった。著者のあとがきの中に、「重要なのは品格のある衰退だと私は思います。」という国際政治学者の坂本義和さんの言葉が紹介されている。まさにこういう衰退を目指すべきなのか、終わりかけだけど、まだ終わっていないから、いろいろと考えておきたい。
(70冊目/2016年)


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