『月の上の観覧車』荻原浩

投稿者: | 2014年5月9日

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荻原浩さんの短編小説集と言うと、『押入れのちよ』がとても印象に残っている。安いアパートに引っ越したら、そこが訳ありの物件で、ちよさんという幽霊が出るという話だ。読者の興味を少しずつ膨らませつつ、何が出て来るんだろうという不安と期待があり、そして物語そのものはユーモアあり、ほろっとしそうな悲哀ありのとても面白い小説だった記憶がある。僕が勝手に荻原浩さんの小説に期待している部分は、そういう「仕掛け」なのかも知れない。

ところがこの『月の上の観覧車』については、そういう面白さがなく、むしろ淡々とシリアスに描かれている短編ばかりだった。そういう意味では、ちょっと期待外れかも知れないけれど、8つの短編小説の中に8つの人生が詰まっている。しかも悲哀を持って振り返る過ぎ去った人生である。あの頃に戻れたら別な選択をしていたのだけどというふうな後悔と、それができないことの悲しさと、それでも前を向いて歩いて行かなくてはならないのが人生だというメッセージがあるような気がする。読み応えのある短編小説ばかりである。

一番印象に残ったのは、「ゴミ屋敷モノクローム」という小説だ。ゴミ屋敷に住むおばあさんの人生を振り返る。ゴミの奥に隠されたものが人生を物語っていて、それはちょっと悲しいものだった。

いろんな違いはあるにしても、誰もが持っている過ぎ去った人生への後悔が描かれている。読んでいる時よりも、読み終えてしばらくして、じわっと湧いてくるような、そんな短編小説集だったと思う。
(42冊目/2014年)


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